英語のアルファベットの16番目である「P」。日常生活でも駐車場などのマークとしてよく見かけますが、その成り立ちや英単語の中での振る舞いに注目すると、意外な歴史やルールが見えてきます。
アルファベットの「P」の起源は、約3000年前のフェニキア文字「ペー(Pe)」に遡ります。この文字はずばり「口」の形をかたどったものでした。それが古代ギリシャに伝わって数学でもおなじみの「Π(パイ)」となり、さらに丸みを帯びて古代ローマで現在の「P」の形へと変化しました。古代の人々が描いた「口」のシンボルが、姿を変えて今も世界中で使われているのは非常にロマンがありますね。
英語の「P」にまつわる面白い特徴の一つが、「発音されない(黙字になる)」単語が多く存在することです。例えば、「心理学」を意味する「psychology」や、「偽の」を意味する「pseudo」、「肺炎」の「pneumonia」などです。これらは古代ギリシャ語に由来する単語で、もともとは「ps」や「pn」という連続する子音をそのまま発音していました。しかし、英語に取り入れられる過程で英語の話者には発音しにくかったため、綴りには残しつつも最初の「P」を発音しないというルールが定着しました。
「P」を使った有名な英語の慣用句には「mind your P’s and Q’s」という表現があります。これは「行儀よくする」「言葉遣いに気をつける」という意味です。語源には諸説ありますが、昔のイギリスのパブで「Pints(パイント)」と「Quarts(クォート)」のツケを間違えないように店主が注意したという説や、活版印刷の時代に職人が小文字の「p」と「q」の活字を逆さまに間違えやすかったため、注意喚起として使われたという説が有名です。
また、日本の街中でよく見かける駐車場の「P」マークですが、これは英語の「parking」の頭文字から来ています。ただし、英語圏の実際の標識では単に「P」と大きく書くだけでなく、駐車可能な時間帯や条件が細かくテキストで併記されていることが多く、日本のように「P」単独で視覚的にアピールする看板ばかりではないのも、ちょっとした文化の違いです。
たった1文字の「P」ですが、そこには古代の文字の歴史や発音の変遷、さらには昔の人々の生活の知恵が詰まっています。次に英語の文章を読むときは、ひっそりと隠れている発音されない「P」を探してみるのも楽しいかもしれません。
