日本語特有の美しい文化でもある「縦書き」。英語では一般的に「vertical writing」と表現されますが、アルファベットを主体とする英語圏の文化事情を紐解くと、文字の並び方に対する全く異なるアプローチが見えてきます。
英語で縦書きを指示する際によく使われるのは「vertical(垂直の、縦の)」という単語です。「縦に書く」であれば「write vertically」、対義語である「横書き」は「horizontal writing」となります。「vertical」の語源は、ラテン語で「頭のてっぺん」や「頂点」を意味する「vertex」に由来しており、文字通り上下のラインを強調する言葉です。
そもそも英語は左から右へ読む「横書き」が前提の言語であるため、日本語のように文字の向きを保ったまま縦に並べる文化は基本的にはありません。この文化の違いが最も顕著に表れるのが「本の背表紙(spine)」です。日本の本はタイトルが縦書きで印字されるのが一般的ですが、洋書の背表紙では、文字を縦に積むのではなく「横書きの文字列を90度回転させて配置する」という手法が取られます。本棚の前で首を横に傾けてタイトルを読むのが、英語圏でのスタンダードなのです。
例外的に、街中のネオンサインなどで「H-O-T-E-L」のようにアルファベットを縦に一文字ずつ並べることもありますが、これはデザイン上の特殊な例として扱われます。
また、少し変わった「縦読み」の文化として、英語には「acrostic(アクロスティック・折句)」という言葉遊びがあります。各行の最初のアルファベットを縦に繋げて読むと、別の単語やメッセージが浮かび上がるというもので、「read vertically(縦に読む)」という表現は、こうした詩のギミックや暗号を解き明かす際にも使われます。
このように「縦書き」という概念一つをとっても、言語ごとの視覚的なルーツやデザインの違いが浮き彫りになります。英語に触れる際は、単なる言葉の意味だけでなく、アルファベットが空間にどう配置されているかという「視覚的な文化」にも目を向けてみると、新しい発見があるかもしれません。
