「knight」の「k」や「island」の「s」、「honest」の「h」…。英語を学んでいると、読まない文字である「サイレントレター」にたくさん出会いますよね。「なんで書いてあるのに読まないの?」と不思議に思うかもしれません。
その理由のひとつは「歴史の名残」です。たとえば「knight」は中世の英語では「クニヒト」に近い発音で「k」も「gh」もちゃんと読まれていました。ところが時代が下るにつれて音が消えていき、綴りだけが残ったのです。つまり、サイレントレターは「昔は発音されていた痕跡」なんですね。
もうひとつの理由は「外来語の影響」です。英語はフランス語やラテン語などから大量の単語を取り込みましたが、そのときに元の綴りを尊重することが多かったのです。たとえば「debt」の b はラテン語の「debitum(借り)」から来ています。本来は発音されていませんでしたが、学者たちがラテン語らしさを示すために「b」を復活させたと言われています。
さらに、印刷術が広まってスペルが固定された時期に、ちょうど大きな音の変化(大母音推移など)が起きました。発音は変わっても綴りはそのまま残ってしまい、結果として「書いてあるけど読まない文字」が増えていったのです。
サイレントレターは学習者泣かせですが、一方で単語の語源や歴史を伝える役割も果たしています。たとえば「sign」と「signature」は発音が違っても、綴りを見れば同じ語源だとわかりますよね。
つまり、サイレントレターは「無駄な文字」ではなく、言葉の歴史を保存している小さなタイムカプセルのようなもの。そう考えると、「読まない文字」にもちょっと愛着が湧いてくるかもしれませんね。
