英語を学んでいると必ず出てくるのが「曖昧母音」、通称「シュワ(/ə/)」です。辞書を見ると「about」の最初の「a」や、「sofa」の最後の「a」がこの音にあたります。日本語にはあまりない発音なので、「なんとなく弱く発音する音」と説明されてもピンとこない人も多いかもしれません。
シュワは、英語で一番よく使われる母音だといわれています。理由はシンプルで、英語では強く発音されない位置(弱勢の位置)の母音が、たいていこの音に変わってしまうからです。たとえば「banana」も、真ん中と最後の「a」はしっかり「ア」と言うのではなく、弱く「ə」のように曖昧になります。
では、どうやって出すのか。コツは口や舌をできるだけリラックスさせることです。大きく開けたり、はっきり形を作ったりせず、軽く「ア」と「オ」の中間のような音を、力を抜いて発音するイメージです。
曖昧母音が重要なのは、英語のリズムにも深く関わっているからです。英語は「強弱のリズム」がはっきりした言語で、強く読む部分と弱く流す部分のメリハリがあります。弱いところで母音がシュワに変わることで、英語特有のリズムや自然な速さが生まれるんですね。
日本語はすべての音をほぼ同じ強さで発音するので、シュワのような「脱力した母音」に慣れるのは少し時間がかかります。でも、この音を意識するとリスニングがぐんと楽になります。なぜなら、相手が弱く発音している部分を「聞き逃している」だけだったと気づけるからです。
つまり、シュワは英語の影の主役なんですね。一見ぼんやりしていますが、英語らしい響きを支える重要な音だと考えると、学ぶ価値がより実感できます。
