牛乳は健康や成長の象徴でもあり、英語の表現にもいろいろと登場します。
よく知られているのが「cry over spilled milk(こぼれたミルクを嘆く)」。意味は「終わったことを悔やんでも仕方がない」で、日本語の「覆水盆に返らず」と同じです。牛乳という身近なものが使われているからこそ、実感を込めて言えるのでしょう。
また「milk of human kindness」という表現もあります。これは「人間らしい優しさ」や「思いやり」を意味し、シェイクスピアの戯曲にも登場します。牛乳が命を育む存在であることから、「優しさの源泉」というイメージが生まれたのですね。
ちょっとユーモラスなのは「to milk someone」。直訳では「誰かを搾乳する」ですが、実際には「人から金や利益を搾り取る」という意味。牛からミルクを搾る動作が、人から何かを引き出す行為にたとえられています。
さらに「milk run」という表現もあります。直訳すると「牛乳配達」ですが、そこから「単調で繰り返しの多い仕事」や「寄り道の多い旅程」を指すようになりました。かつて牛乳配達が日常に溶け込んでいた時代の名残です。
牛乳をめぐる英語表現には、やさしさから後悔、さらにはユーモアまで幅広い意味が込められています。次にコップに牛乳を注ぐとき、こうしたフレーズを思い出すと、シンプルな飲み物が少し言葉の世界とつながって感じられるかもしれませんね。