フランス語に由来する外来語の語源・由来|芸術・ファッション

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フランスは先史時代から芸術の中心地で、フランス南部のショーヴェ洞窟には約3万年前に描かれた壁画が残っています。17世紀には華麗な宮廷文化の開花と共に、さまざまな芸術・ファッション用語が誕生しました。今回は、芸術・ファッションに関するフランス語の外来語の意味・語源・由来についてご紹介します。

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アトリエ Atelier

アトリエは、フランス語で「仕事場」を意味する「atelier」が語源です。語源をさかのぼると、古フランス語のastelier(作業場、材木の山)、astele(木片)、ラテン語のhastella(細い棒)に由来します。英語ではフランス語由来のatelierやstudio(スタジオ)と呼ばれます。

アバンギャルド Avant-garde

アバンギャルドは、フランス語で「前衛」を意味する「avant-garde」が語源です。フランス語でavantは「前」、gardeは「衛兵、警備員」を意味します。アバンギャルドとは、芸術分野において革新的・挑戦的な活動をする人のことです。もともと軍事用語で、前衛の少数精鋭部隊のことを指す言葉でしたが、20世紀初頭に未知の表現を切り開こうとする前衛芸術のことも指すようになりました。

アンティーク Antique

アンティークは、フランス語で「古い、古代の」を意味する「antique」が語源です。フランス語で「骨董品」はantiqueではなく、「古代、古代文明」を意味するantiquitéの複数形のantiquités(オンティキテ)と言います。英語の場合、antiqueは「古風な、古代の、骨董品」、antiquityは「古代、大昔」を意味しますが、antiquityの複数形のantiquitiesは「古代の遺物」という意味にもなります。

オブジェ Objet

オブジェは、フランス語で「物体、事物、対象、目標、客観」を意味する「objet」が語源です。英語のobject(オブジェクト)は同根語です。日本語のオブジェは立体的な芸術作品のことを指しますが、その場合の対訳語は、フランス語ではobjet d’art(芸術作品)、英語ではart object(芸術品)やwork of art(芸術作品)になります。対義語は「主題、テーマ、主体、原因」を意味するsujet(シュジェ)で、英語のsubjectにあたります。

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オマージュ Hommage

オマージュは、フランス語で「尊敬、敬意、臣従儀礼」を意味する「hommage」が語源です。臣従儀礼(しんじゅうぎれい)とは、中世ヨーロッパの封建制度において、家臣が地位や称号と引き換えに主君に服従と忠誠を違う儀式のことです。領主に対する尊敬の念から転じて、芸術や創作分野において、過去の作品や作者に対する尊敬を込めた模倣のことをオマージュと呼ぶようになりました。そのためオマージュには尊敬や敬意が前提になっています。

クレヨン Crayon de cire

クレヨンは、フランス語で「鉛筆」を意味する「crayon」が語源です。現代のフランス語で単にcrayonは「鉛筆」のことで、クレヨンは「crayon de cire」と言います。cireは「蝋、ワックス」のことです。語源を遡ると、crayonはcraise(チョーク)と接尾辞-on(小片)が合わさった言葉で、ラテン語のcreta(チョーク)に由来します。諸説ありますが、現在のようなクレヨンは19世紀にフランスで発明されたとされています。

クロッキー  Croquis

クロッキーは、フランス語で「速写」を意味する「croquis」が語源です。類似語に英語のスケッチ(sketch)があります。クロッキーとスケッチはほぼ同義とされていますが、クロッキーは10分程度の短時間なものを指すそうです。

コサージュ  Corsage

コサージュは、フランス語で「胴衣の花束」を意味する「bouquet de corsage」が語源です。bouquetは「小さな花束」、corsageは「婦人服の胴部・見頃」を意味します。現在では英語読みのコサージと短縮して呼ばれています。結婚式などで悪霊や病気から防ぐために古代から身に付けられていたそうです。

コラージュ Collage

コラージュは、フランス語で「糊付け」を意味する「collage」が語源です。紙を貼ること自体は紙が誕生した紀元前200年から存在していたそうです。技法としてのコラージュは、19世紀のパピエ・コレ(papier collé)が始まりとされています。その後1912~13年頃にパブロ・ピカソやジョルジュ・ブラックが発展させました。

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コンクール Concours

コンクールは、ラテン語で「群集、合流」を意味する「concours」が語源です。類似語にコンテスト(contest)やコンペティション(competition)があり、内容により使い分けられます。フランス語で単にコンクールという時は、自動車の品評会であるコンクール・デレガンス(Concours d’élégance)を意味するそうです。

シュール Sur

シュールは、フランス語で「」を意味する「sur」が語源です。シュール(sur)は、超現実主義を表わす「シュールレアリスム(surréalisme)」の略称です。シュールレアリスムは20世紀にフランスの作家アンドレ・ブルトン(André Breton)が始めた文学・芸術運動です。転じて現実離れしたことを指すようになりました。

シルエット Silhouette

シルエットは、フランスの財務大臣エティエンヌ・ド・シルエット(etienne de silhouette)の名前に由来しています。シルエットの語源は1754-63年の「7年戦争」により厳しい倹約政策を課したフランスの財務大臣エティエンヌ・ド・シルエット(Etienne de Silhouette)の名前に由来しています。厳格な経済政策のために肖像画を黒一色で描くように指示したから、切り絵の肖像画が趣味だったから、などの説があるそうです。

ズボン Jupon

ズボンは、フランス語で「ペチコート、アンダースカート」を意味する「jupon」が語源です。juponは、フランス語で「スカート」を意味するjupeと、接尾辞の-onが合わさった言葉です。語源をさかのぼると、アラビア語で「ゆったりした服、長い服」を意味するjubbah(ジュッバ)に由来します。日本語では、和服用の下着のことを襦袢(じゅばん)と言いますが、実はズボンと同じ語源です。襦袢はポルトガル語で「上着」などを意味するgibão(ジバゥン)の音写ですが、gibãoもアラビア語のジュッバに由来しているからです。言葉の繋がりは面白いですね。

テクスチャ  Texture

テクスチャは、ラテン語で「織り方」を意味する「textura」が語源です。現在では物の質感や手触りのことを指しますが、もともと織物の質感のことを指したそうです。

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デッサン Dessin

デッサンは、フランス語で「素描」を意味する「dessin」が語源です。英語のドローイング(drawing)にあたります。フランス語では建築の図面などの意味も含むそうです。

デフォルメ Déformer

デフォルメは、フランス語で「変形する、歪曲する」を意味する「déformer」が語源です。美術作品において、対象を変形・歪曲・強調して表現することです。フランス語には美術作品における誇張や簡略化などの意味はないそうです。力学や数学などにおいて「変形」という意味で用いられるそうです。

バレエ Ballet

バレエは、イタリア語で「踊る」を意味する動詞「ballare」が語源です。台詞によって進行する演劇に対し、踊りや身振りなどの舞踏によって進行する劇のことを指します。ルネサンス期に西ヨーロッパで誕生したそうです。

ベレー Béret

ベレーは、ラテン語で「フード、マント」を意味する「birrus」が語源です。丸くて平たい、縁なしの柔らかい帽子のことです。現在の形状のものは、スペイン・フランス国境付近のバスク地方に住んでいた農民の間で広まり、一般化したそうです。

マネキン Mannequin

マネキンは、フランス語で「モデル」を意味する「mannequin(マヌカン)」が語源です。語源をさかのぼると、オランダ語で「人間」を意味するmanの愛称形mannekijnに由来します。一説では、フランス語の発音のマヌカンだと「客を招かん(≒マネカン)」と聞こえてしまい縁起が悪いため、「客を招き(≒マネキン)」と聞こえるマネキンになったそうです。

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マント Manteau

マントは、フランス語で「コート、マント」を意味する「manteau」が語源です。さらにさかのぼると、ラテン語で「袖のない外套」を意味するmantellumに由来します。英語のmantleも同根語です。

モチーフ Motif

モチーフは、フランス語で「動機、理由」を意味する「motif」が語源です。語源をさかのぼるとラテン語の「動き」に由来します。創作のキッカケとなる中心的な思想や題材のことですが、主題(subject)と同義に捉えられることもあります。

ラメ Lamé

ラメは、フランス語で「刃、薄板、箔」を意味する「lamé」が語源です。金属箔の糸や、金銀糸を織り込んだ織物のことです。舞台衣装など装飾性が強い衣装に使用されます。

ルージュ Rouge

ルージュは、フランス語で「」を意味する「rouge」が語源です。語源をさかのぼるとラテン語で「赤」を意味する「rubeus」に由来します。日本では口紅のことですが、フランス語で口紅は「rouge à lèvres」と表します。

ルネサンス Renaissance

ルネサンスは、フランス語で「再生、復活」を意味する「renaissance」が語源です。「re」は「再」、「naissance」は「誕生」を意味します。19世紀のフランスの歴史家であるジュール・ミシュレ(Jules Michelet)が初めて学問的に使用したそうです。

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まとめ

今回は、「日本語になったフランス語の外来語(芸術・ファッション)」について、一覧形式でご紹介しました。紹介した単語の中にはフランス語だけが語源ではないものもありますが、日本語にはフランス語経由、もしくはフランス語の発音で伝わったため「フランス語の外来語」に区分しています。

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