英語で「妥協」を表現する際、最も一般的に使われる単語は「compromise」です。日本語の「妥協」には、どこか「あきらめる」「屈する」といったネガティブな響きが含まれることもありますが、英語の語源や使われ方を見ると、より建設的なニュアンスが見えてきます。
「compromise」の語源は、ラテン語の「compromissum」にあります。これは「com(共に)」と「promittere(約束する)」が組み合わさった言葉で、もともとは「互いに第三者の裁定に従うことを約束する」という意味でした。つまり、単なる譲歩ではなく、双方が納得して合意に達するための「共同の約束」というポジティブな側面が根底にあります。
英語圏のビジネスや外交の場では、妥協ができることは「交渉能力が高い」と評価される要素でもあります。そのため、日常会話では「meet someone halfway(相手と中間地点で会う)」という慣用句も好んで使われます。これは「お互いに歩み寄る」というニュアンスで、一方的な我慢ではなく、フェアな解決策を探る姿勢を表現するのにぴったりの言葉です。
一方で、「compromise」には注意が必要な、もう一つの顔があります。それは「(名声や安全などを)汚す、危うくする」という動詞としての意味です。例えば「compromise security」と言えば「セキュリティを危険にさらす」となります。理想や信念を曲げてしまう、という文脈でも使われるため、「妥協」という言葉が持つ表裏一体の性質——「合意への道」か「質の低下」か——を、英語圏の人々も敏感に感じ取っていることが分かります。
もし、あまり納得がいかないまま「今回はこれで手を打とう」と不本意な妥協をする場合は、「settle for ~」という表現が使われます。これは「ベストではないけれど、これで我慢する」というニュアンスが強く、心からの合意である「compromise」とは明確に使い分けられています。
文法的な特徴としては、「妥協する」という動作を「make a compromise」と名詞を使って表現することが多いです。これは、妥協が単なる一時的な感情の変化ではなく、一つの「合意案」を作り上げるプロセスであることを示唆しています。
このように、英語における「妥協」は、対立を終わらせるための知的なツールとしての側面と、大切なものを守りきれない脆さの側面の両方を持ち合わせています。言葉の背景を知ることで、海外のニュースやビジネス交渉の裏にある「歩み寄りの精神」をより深く理解できるのではないでしょうか。
