英語で「受け身」を表す代表的な単語は「passive」です。文法用語の「受動態」としてだけでなく、人の性格や態度が消極的であることを表す際にも使われますが、その語源を探ると、思いがけない言葉との繋がりが見えてきます。
「passive」の語源は、ラテン語で「耐え忍ぶ」「苦痛を受ける」を意味する「pati」に遡ります。実はこれ、病院の「患者」や「忍耐強い」を意味する「patient」、さらには「情熱」を意味する「passion」と全く同じ語源を持っています。キリストの受難(The Passion)という言葉があるように、もともとは「外からの力や苦痛を一身に受け入れる」という激しいニュアンスから派生しました。消極的なイメージのある「受け身」と、燃え上がるような「情熱」が同じルーツから来ているというのは、非常に興味深い事実ですね。
日常会話において、性格としての「受け身」はネガティブな意味合いで使われることが多いですが、状況によってはポジティブな表現も存在します。例えば、自分から波風を立てず、周りに合わせる柔軟な姿勢は「go with the flow(流れに身を任せる)」と表現されます。また、自分から積極的に出しゃばらず、他人に主導権やリーダーシップを譲る態度は「take a back seat(後部座席に座る)」という、車社会のアメリカらしいユニークな慣用句で表すことができます。
文法における受け身(受動態)は「passive voice」と呼ばれます。英語は通常「誰が何をしたか(能動態)」をはっきりさせる言語ですが、あえて受け身を使うことで「責任の所在を意図的にぼかす」というテクニックがあります。政治家や企業が不祥事の釈明をする際によく使う「Mistakes were made.(間違いが犯された=ミスがありました)」というフレーズはその典型です。「私がミスをした(I made mistakes)」とは言わず、誰がやったのか(主語)を隠すための便利な表現として定着しています。
このように、英語の「受け身」は単なる文法のルールにとどまらず、人間の忍耐や心理的なテクニック、さらにはコミュニケーションの処世術までをも表しています。次に「passive」という単語に出会った時は、その奥にある「外からの力を受け止める」という根源的なイメージを思い浮かべてみてください。
