日本の食卓に欠かせない薬味や食材である「ネギ」。英語で言おうとして、辞書を引いて種類の多さに戸惑った経験はありませんか?実は英語圏では、ネギの種類や地域によって呼び名が細かく分かれており、その背景には意外な歴史が隠されています。
日本のスーパーでよく見かける細い「青ネギ」や「万能ネギ」は、アメリカ英語では「green onion」や「scallion(スカリオン)」、イギリス英語では「spring onion」と呼ばれるのが一般的です。特に「scallion」の語源はロマンに溢れており、古代パレスチナの都市アスカロン(Ascalon)に由来すると言われています。十字軍が中東からヨーロッパへ持ち帰ったことで、この名前が広まったという歴史的な背景があります。
一方、鍋物やすき焼きに入っているような太い「白ネギ(長ネギ)」は、欧米には全く同じものが少なく、西洋料理でよく使われる太い「leek(リーキ、ポロネギ)」という単語で代用されることが多いです。
また、日本の長ネギそのものを指す学術的な英名として「Welsh onion」という言葉もあります。ここで面白いのは、「Welsh」という単語です。現代英語では「ウェールズ地方の」という意味になりますが、このネギの原産地はウェールズではありません。実はこの「Welsh」は、古いゲルマン語で「外国の」や「見慣れない」を意味する「walhaz」という言葉に由来しています。つまり、かつてのヨーロッパの人々にとって、東洋から来たネギは「外国の珍しいタマネギ」だったのです。
ネギ(タマネギ類全般)を使ったユニークな慣用句も存在します。例えば、イギリスの古いスラングに「know one’s onions」という表現があります。直訳すると「自分のネギ(タマネギ)を知っている」となりますが、これは「自分の専門分野に精通している」「有能である」という意味です。1920年代に生まれた言葉で、野菜を確実に育てて見分ける知識があることは、一人前である証拠だというニュアンスから来ています。
このように、身近な「ネギ」も英語のフィルターを通すと、古代都市の歴史から「外国」を意味する古い言葉、そして有能さを示すスラングにまで繋がっています。スーパーでネギを見かけた際は、ぜひその奥深い英語の世界を思い出してみてください。
