別れ際の挨拶として最も有名な「Goodbye」。誰もが知るこの単語ですが、その語源や、状況による使い分けのニュアンスを探ると、英語圏の文化が大切にしてきた「祈り」や「人との距離感」が見えてきます。
「Goodbye」という言葉の成り立ちは、実は非常に宗教的なものでした。16世紀頃の英語で「God be with ye(神があなたと共にありますように)」という別れの祝福の言葉が、長い年月を経て短縮され、「Godbwye」などの形を経て現在の「Goodbye」になったと言われています。日本語の「左様ならば(それならば、お別れですね)」が事実を受け入れる響きを持つのに対し、英語は相手の無事を神に祈る言葉がルーツになっています。
現代の日常会話では、実は「Goodbye」は少し重たい、あるいは丁寧すぎる響きを持つことがあります。友人間で最も使われるのは、短くした「Bye」や「See you」です。一方で、二度と会わないかもしれないような永別の際には「Farewell」という言葉が使われます。これは「fare(進む)」と「well(よく)」が組み合わさったもので、「あなたの行く道が良好でありますように」という旅立ちの願いが込められた、少し古風でドラマチックな表現です。
面白いのが、文化的な背景を持つ「去り際」の表現です。例えば「Irish goodbye(アイルランド風のさようなら)」という慣用句があります。これは「誰にも挨拶せずにパーティー会場などをこっそり抜け出すこと」を指します。諸説ありますが、アイルランドの人々がお酒の席を抜ける際の照れ隠しや、引き止められるのを避ける文化から生まれた言葉だと言われています。似た意味の表現に「French leave(フランス式の休暇)」という言葉もあり、文化同士のステレオタイプが言葉に残っているのが興味深いところです。
また、英語圏では韻を踏んだ遊び心のある別れの挨拶も好まれます。代表的なのが「See you later, alligator.(またね、ワニさん)」というフレーズです。これに対しては「After a while, crocodile.(またあとで、クロコダイルさん)」と返すのが定番のセットです。意味自体に深い内容はありませんが、言葉の響きを楽しみながら別れを惜しむ、親しい間柄ならではのユーモアが感じられます。
文法的な特徴としては、最近では「Goodbye」を動詞のように使い、「He goodbyed me.(彼は私にさよならを告げた)」と言うことはまずありません。基本的には間投詞(挨拶)として使われますが、ビジネスシーンで「Say our goodbyes(別れの挨拶をする)」のように名詞として複数形で扱われることはよくあります。
このように、何気なく使っている「さようなら」の言葉には、神への祈りから、去り際のマナー、そして親しみを込めたジョークまで、豊かな感情が詰まっています。次に誰かと別れる際、相手との関係性にぴったりの「さようなら」を選んでみると、コミュニケーションがより一層深まるかもしれません。
