ピジン言語、クレオール言語、混合言語の違いと特徴とは

クエッション言語学

複数の言語が混ぜ合わせると、ピジン言語、クレオール言語、混合言語などと呼ばれますが、それぞれの違いにはどのようなものがあるのでしょうか。

そこで今回は、ピジン言語、クレオール言語、混合言語の違いとそれぞれの特徴についてご紹介します。

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ピジン言語とは

定義

ピジン言語(pidgin language)とは、共通の言語を持たない人々が、意思疎通をするために新しく作り上げた言語のことです。

例えば、交易の際に、現地の人と現地の言葉を知らない外国人が会話をするために、お互いの母語を混ぜて新しい言語を作ることがあります。どちらかの母語を話すわけではなく、お互いに共通する言語を持っていないことが条件です。

英語が国際言語として浸透している現代では稀な出来事で、ピジン言語が作られた時期は主に大航海時代の15世紀以降です。植民地支配や交易のために、現地の人々と対話する必要性が生じたことがきっかけです。例えば、英語が話されていない地域では、英語と現地語を混ぜ合わせたピジン英語(pidgin English)が作られました。

「pidgin」の語源は英語のbusiness(ビジネス)の中国語風の発音に由来します。本来、ピジンは中国におけるピジン英語(Chinese Pidgin English)のみを指す言葉でしたが、現在では一般化されて他の地域のピジンのことも指します。

特徴

ピジン言語には以下のような特徴があります。

  1. 母語話者がいない
  2. 文法や発音が単純化されている
  3. 語彙の数が限られている
  4. 1つの単語に複数の意味が含まれる
  5. 他の言語の単語が混ざっている

母語を持っている人たちが通商や仕事の時だけ使う言葉なので、母語になっているわけではありません。使われる場面が限られているため、複雑な表現も必要なく、比較的に文法や発音は単純化されています。「a, i, u, e, o」などの基本母音も出来るだけ少なくなっています。使う語彙は少なく、必要最低限なものに限定されています。そのため1つの単語に複数の意味が含まれるケースがあります。

ごがくねこ
ごがくねこ

言いたいことが正確に伝わらないことがあるかもしれませんが、意思疎通が簡単に出来ることが大きなメリットですね。

クレオール言語とは

定義

クレオール言語(creole language)とは、ピジン言語が地域に定着し、子供たちの世代で母語として話されるようになった言語です。

ピジン言語が母語になることはクレオール化(creolization)とも呼ばれています。作られ始めたのは植民地主義が拡大した15世紀以降で、例えば、イギリスの植民地では17世紀頃から英語ベースのクレオールが作られています。

creoleという語は、フランス語(créole)、スペイン語(criollo)、ポルトガル語(crioulo)で「宗主国生まれ」という意味があります。語源は、スペイン語やポルトガル語で「育てる、作る」を意味するcriar(クリアール)です。

クレオール(クリオ―リョ)という言葉は、現在ではヨーロッパの植民地で生まれ育った人々とその子孫や、彼らが話す言葉のことを意味するようになりました。

特徴

クレオール言語には以下のような特徴があります。

  1. 母語話者がいる
  2. 文法や語彙が発達している
  3. 不規則活用が規則化されている
  4. 文法に一貫性がある
  5. 他の言語を吸収している

ピジンとクレオールの違いの一つは母語話者がいることです。母語になったことで、より明確で多彩な表現をするようになったため、文法や語彙が発達しています。世代を越えて使用されることによって、動詞の不規則活用などが規則化されて、文法に一貫性があります。

複数の言語の特徴を取り入れて形成される場合もあります。例えば、話者数が1000万人以上いるハイチ・クレオール語はフランス語がベースになっていますが、スペイン語やポルトガル語などの語彙も取り入れています。

ピジン・クレオールの例

代表的なピジン言語とクレオール言語の例をいくつかご紹介します。ピジン言語なのか、クレオール化して母語になっているのかの区別は、厳密には困難なのでまとめて紹介しています。

トク・ピシン

トク・ピシン(Tok Pisin)とは、パプアニューギニアの公用語になっている英語ベースのクレオールです。

トク(tok)は「言語、単語」を意味する言葉です。労働やプランテーションのために、オーストラリアやその付近の島々で、異なる言葉を持つ人々が接触したのが始まりとされています。

ピジン語

ピジン語(Pijin Language)とは、南太平洋のソロモン諸島周辺で話されている英語ベースのクレオールです。

ソロモン諸島は、オーストラリアの北東、パプアニューギニアの東に位置します。ピジン語 (Pijin Language) とピジン言語(pidgin language)は似ていますが別のことです。ややこしいですね。

ベリーズ・クレオール語

ベリーズ・クレオール語(Belize Kriol)は、ベリーズで話されている英語ベースのクレオールです。

ベリーズでは英語が公用語ですが半数以上が多言語話者です。2010年の国税調査では、英語は62%(18万人)、スペイン語は56%(16万人)、クレオール話は44%(13万人)が話しています。ベリーズ・クレオール語は英語をベースとして西アフリカ語群が合わさって形成されました。

ピジン言語と日本語の関係

ピジン言語がビジネスのために誕生したのなら、日本語と英語の間にも作られる可能性があるのか?という疑問も湧きますが、ピジンが作られるには条件があります。

  1. 異なるコミュニティ間で、長期にわたる定期的な交流がある
  2. それらの間でコミュニケーションをする必要性がある
  3. 共通語が欠如している

日本語と英語のコミュニティ間の交流は盛んなので①と②は当てはまりますが、③の「共通語の欠如」が微妙です。英語は世界の共通語として認識され、日本で既に浸透していますし、逆に日本語が達者な英語話者も多くいます。

ただ、歴史を振り返ると、小笠原諸島では英語と日本語、横浜では中国語と日本語の合成語が確認されています。

小笠原方言

英語では「Bonin English」と言います。「Bonin」は小笠原群島の別名「ボニン諸島(Bonin Islands)」に由来します。

小笠原諸島では、19世紀頃に欧米系移民との間で英語ベースの言葉でコミュニケーションがされていましたが、現在は日本語に言語交替(language shift)されて話者数は減少しています。ただ、語彙レベルでは痕跡は残っているのだそうです。

横浜ピジン日本語

横浜に住んでいた中国語圏や英語圏の人々によって19~20世紀に話されていたピジン言語です。

ベースは日本語で、中国語と英語が混ざって発展しました。英語ではYokohama Pidgin Japaneseと呼ばれています。

ちなみに、日本で話されているピジン英語はJapanese Pidgin Englishと呼ばれています。1950年頃の米軍基地で話されていたバンブー・イングリッシュ(Bamboo English)もプレピジン(pre-pidgin)の1つとされています。

混合言語とは

混合言語(mixed language)とは、2つ以上の言語が混ざり合った言語のことです。

ハイブリッド言語(hybrid language)や融合言語(fusion language)とも呼ばれています。代表的な例として、アメリカやカナダで話されているミチフ語(michif)や、エクアドルで話されているスペイン語とケチュア語が混ざったメディアレングア(Media Lengua)などがあります。

少数ですが、米国のヒスパニックの間で話されているスパングリッシュ(spanglish)や、ポルトガル語とスペイン語が混ざったポルトニョール(portuñol)も混合言語とみなされる場合があります。

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混合言語はピジン・クレオールと違う?

混合言語は、ピジン言語やクレオール言語とは区別されることがあります。

何故なら、ピジン言語のように語彙や文法が省略化されているわけではありません。また、クレオールのように母国語化しているとも限りません。一般的に、混合言語はバイリンガルなど両言語に堪能する集団から発生すると考えられているからです。

混合言語は、借用語や外来語とも異なります。

例えば、日本語は中国語や英語などから沢山の語彙を借用していますが、文法や基本語彙まで混合しているわけではありません。単語を他の言語から取り入れているからといって、混合言語に定義されるわけではありません。

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混合言語は、コードスイッチングとも異なります。

コードスイッチング(code-switching)とは、複数の言語を切り替えることなので、「切り替え」と「混合」では意味が異なるからです。

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混合言語は曖昧な概念

ただ、混合言語の定義に一致した見解があるわけではありません。

どこまでが「混合」でどこまでが「借用」なのか。どこまでが「混合」でどこまでが「切り替え」なのか。その線引きはとても曖昧で、言語学者によっても意見が異なります。

例えば、ドイツ生まれの言語学者のマックス・ミュラー(Friedrich Max Müller)や、アメリカの言語学者のホイットニー(William Dwight Whitney)などは、混合言語の存在に懐疑的な立場です。

そもそも、全ての言語は他の言語から何かしらの影響を受けているので、広義では全ての言語が混合言語と言えてしまいます。

全ての言語が混合しているのなら、混合言語の定義をわざわざ議論するのはナンセンスですよね。そのようなこともあり、混合言語の概念はとても曖昧なのです。

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まとめ ピジン・クレオール・混合言語の違い

ピジン言語、クレオール言語、混合言語のそれぞれの違いを改めてまとめました。

ピジンクレオール混合言語
母語いないいるいない
文法単純複雑複雑
発音単純複雑複雑
語彙少ない多い多い

ピジン言語は共通の言語を持たない人々が意思疎通をするために作り上げた言語で、それが母語化するとクレオール言語と呼ばれます。混合言語も複数の言語が混ざり合った言語のことですが、話者がバイリンガルのように両言語に堪能している点で異なります。

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