言語学習に限らず、学習する内容を何度も繰り返すことは大前提とも言えます。以前も少し取り上げましたが、何度も復習をすることで忘れにくくなる、という研究は多くされてきました。
復習の目安はおよそ3~10回と言われ、個人差はありますが、何度も繰り返すことで脳が大切な情報だと錯覚・認識するという仕組みです。私の場合は、3回では覚えられないので5〜8回を目安に繰り返しています。
記憶する際に意識したいのが短期記憶(short-term memory)と長期記憶(long-term memory)です。
短期記憶の保持期間は長くても数十秒程度と言われているので、1分後ぐらいに脳にアクセスして長期記憶になっているのかを確認すると良いと思います。直ぐに長期記憶になる訳ではありませんが、3回目を過ぎたあたりから思い出しやすくなるはずです。
情報はなんでも詰め込めば良いというわけでもなく、短期記憶の容量にも限度があります。有名な仮説がマジカルナンバー(magical number)です。この理論によると、人間が瞬間的に記憶できる情報の数は、7±2(ミラーの法則)もしくは4±1(ネルソン・コーワンの法則)だとされています。
11ケタの電話番号が覚えづらいのはそもそも限界があるからです。自分の電話番号やよく使う番号を覚えているのは、繰り返し使っているので長期記憶になっているからです。
短期記憶やマジカルナンバーは有名なのでご周知の方も多いとは思いますが、言語学習に限らず、効率的に勉強をしたいのなら押さえておきたいですね。
前置きが少し長くなりました。
タイトルにもありますが、アドバイスする際に「何度も繰り返して覚えろ」と言うのは、ある意味で精神論だと個人的には思っています。
なぜなら、何度も繰り返すのは当たり前のことだからです。テクニカルなアドバイスとはいえません。言葉を換えれば「基本的なことをやろう」とアドバイスしているわけです。
よくあるパワハラに「前にも言ったよね」「1回で覚えろよ」「1度しか言わないから1度で覚えろ」などがあります。すぐに無理だと投げ出すのは論外ですが、1回で覚えるのは基本的に不可能ですよね。人間は忘れる生き物だからです。
もちろん「繰り返して覚えろ」というアドバイスを否定しているわけではありません。推奨したいですが、繰り返しは前提です。アドバイスするなら、まず相手が繰り返しているのかを確認し、その上で出来ないのなら技術的な解決策を提案したほうが良いのではと思います。
個人的におすすめしたい方法は「繰り返し」を自分の生活に取り組むことです。
以前紹介した「ながら作業」も1つの方法です。
学習内容をいかに実践できるかが大切です。
これはエピソード記憶(episodic memory)にも関係していることです。
エピソード記憶は自分が経験した出来事に関する記憶で長期記憶に分類されています。昨日のことを1つ思い出せと言われたら、何かしらのエピソードを思い出すのが速いですよね。昨日は何を誰と食べたのかなど。というのも、エピソード記憶は忘れにくいという特徴があるからす。
例えばスペイン語圏に住んでいる時にいつも自分の課題が終わらないなら、
という表現が口癖になるくらい自然に出てきます。
ただ闇雲に同じフレーズを繰り返すのも1つの記憶法ですが、自分の経験や生活に取り込むことで使う必然性が生まれます。
ピアノなら弾く、車なら運転する、クイズならプレイする、将棋なら指す、言葉なら話したり書いたりする。など。できれば楽しんで生活に取り込みたいですね。
まとめると、
- 繰り返しは大前提
- 繰り返して覚えろは場合によっては精神論
- 繰り返しても出来ないなら技術的な解決策を提示すべき
- 繰り返し学習を生活の中に取り組む
ただひたすら繰り返すより効果があるはずです。生活の中に上手く融合してみてください。
反面教師でも、皆さんの学習の何かしら一助になれば幸いです。