月が人間や文化に与えた影響|英語のイディオムから

月

夜空にひときわ輝く月は、有史以前から人々を魅了し続けてきました。

その規則的な満ち欠けのサイクルは、人間社会の文化や慣習にも影響を与えてきました。例えば太陰暦です。現在使われている太陰暦には、イスラム教社会のヒジュラ暦がありますが、明治時代まで使われていた旧暦(太陰太陽暦)も、太陰暦がベースになっています。旧暦は太陰暦を基にしつつも太陽の動きを取り入れているため、太陰太陽暦と呼ばれています。

月は文化だけでなく言語にも影響を及ぼし、各地域でさまざまなことわざやイディオムが用いられています。日本語では、月とすっぽん、花鳥風月、水月鏡花、月夜に提灯、雨夜の月、月に叢雲花に風、などのような表現があります。

参考 月に関する英語のイディオム一覧
参考 月 (moon) の象徴・意味一覧

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よく使われる英語のイディオムのひとつに「once in a blue moon」があります。これは「めったに起こらない」ことを意味します。blue moonは直訳すると「青い月」になりますが、1か月の間に「2回目の満月」が現れることを指します。月の周期は約29.5日なので、1か月に2回の満月は、2~3年に1度しか起こりません。このような背景から、めったに起こらないことを言い表すようになりました。

例えば、I only see my old college roommate once in a blue moon.(大学時代の友人にはめったに会わない)のような表現になります。

そのほかのよく使われるイディオムには「over the moon」があり、「とても幸せ、嬉しい」という意味になります。語源には諸説ありますが、童謡『Hey Diddle Diddle』の「牛が月を飛び越える」というフレーズに由来すると考えられています。月を跳び越すくらい嬉しいということですね。

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また、「reach for the moon」もしばしば使われる表現です。文字通り、月に手を伸ばすように「困難なことに挑戦する」ことを意味します。日本語の辞書では「高望みする」のようにネガティブに和訳されることが多いですが、野心的に何かを目指すことを表しています。似たようなイディオムには「shoot for the moon」があり、こちらも文字通り、月を狙うように、高い目標に挑戦することを意味しています。

変わった意味の単語としては「moonstruck」というのもあります。これは「狂気じみた」という意味があり、月の光が人間の心や精神に影響を与えると信じられていたことに由来します。lunacy(狂気)、lunatic(狂人)はラテン語のluna(月)に由来するので別の語源ですが、月が狂気をもたらすというイメージは同様です。

参考 英語の語彙に影響を与えた外国語

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月が人の心を狂わせるという考え方は、詩や文学にも残っています。例えば、シェイクスピアの『オセロ』には、次のようなフレーズがあります。

“It is the very error of the moon. She comes more nearer earth than she was wont. And makes men mad.”
月の軌道がずれたのか、いつもより地球に近づくと、人を狂わせるのだ。

月のイメージは実に多彩ですね。愛やロマンスから、神秘や狂気に至るまで、詩や文学のインスピレーションの源となってきました。

近年では、月に潜在している天然資源をめぐって開発計画が活発化しているように、月の存在は遠くて神秘的なものから、近くて実際的なものに変わりつつあるようです。未来の人たちが月に抱く印象は、「愛・神秘・狂気」からより実利的なものに変化していくのでしょうか。どのようなイメージになるにせよ、地球唯一の衛星である月は、私たちにとってかけがえのない存在であり、月にまつわる多様な表現は、今後何世代にもわたって、私たちの文化や言語、そして生活とともにあり続けていくのでしょうね。

月のイメージは「静」から「動」へ変化している
月(moon)といえばどのようなイメージを思い浮かべるでしょうか。 日本では、かぐや姫や月のうさぎに…
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