今回は「スペイン語で最も使われているアルファベット」について紹介します。
一方、スペイン語の場合は、今のところそのような言語コーパスを用いたものはほとんどなく、有名な小説で使われている単語を基にした分析がいくつかありました。例えば、ミゲル・デ・セルバンテスが1605年と1615年に出版した『ドン・キホーテ(Don Quijote) 』や、レオポルド・アラスが1884~1885年に出版した『ラ・レヘンタ(La Regenta)』などの長編小説です。『ドン・キホーテ』はもう400年前のスペイン語なので、今回は『ラ・レヘンタ』を基にした分析を紹介します。
文字 | 割合 | 文字 | 割合 |
---|---|---|---|
スペース | 17.599% | . | 1.503% |
a | 11.107% | , | 1.409% |
e | 10.16% | q | 1.025% |
o | 7.379% | v | 0.893% |
s | 5.841% | g | 0.876% |
r | 5.145% | h | 0.795% |
n | 5.049% | y | 0.785% |
i | 4.974% | f | 0.487% |
l | 4.815% | j | 0.371% |
d | 3.875% | z | 0.32% |
u | 3.324% | ; | 0.211% |
t | 3.109% | ñ | 0.202% |
c | 3.018% | x | 0.071% |
m | 2.104% | : | 0.054% |
p | 1.958% | k | 0.003% |
b | 1.537% | w | 0.001% |
出典:Frecuencia de las letras en castellano: “La Regenta” – Kriptópolis
この統計では、スペース、カンマ(,)、ピリオド(.)、コロン(:)、セミコロン(;)などの記号や句読点も含まれています。文字だけ見てみると、多い順に、a, e, o, s, rでした。一般的には、スペイン語で最も使用されている文字はe、という調査結果も多いようです。上位にa, e, oの母音がランクインされているように、スペイン語で使われている文字の半分は母音だとも言われています。
ちなみに、スペイン語には5つの母音が含まれているユニークな単語が4万近くもあります。例えば、murciélago(コウモリ)、auténtico(本物の)、abuelito(おじいちゃん)、estimulación(刺激)などです。発音も分かりやすいですね。murciélagoなら、mu=ム、r=ル、ci=シ、é=エ、la=ラ、go=ゴ、で「ムルシエラゴ」という発音になります。
日本人にとってスペイン語が発音がしやすいのは、この母音の多さも一因でしょう。スペイン語の単語は子音の後にはほぼ必ず母音がつくので、日本語話者にとってはローマ字読みの感覚で発音できるからです。更に、アルファベットは表音文字ですが、スペイン語は英語とは違い文字と発音がそこまで乖離していません。ただ、日本人にとってスペイン語が聞き取りやすいかどうかは、もちろん個人差があります。以前に「スペイン語のリスニングが難しい理由と対処法」でも紹介しましたが、スペイン語は、①話すスピードが速い、②国によって色々な話し方がある、③動詞の活用形が多い、などの特徴があるからです。もちろんそれ以上の有り余る「スペイン語のメリット」も沢山ありますが。
今回は小説で使われる単語を基にした分析結果を紹介しましたが、コーパス言語学は現在進行形で発展しています。スペイン語の権威であるスペイン王立アカデミーは、「スペイン語で最も使われる単語」については公表していますが、「最も使われる文字」はまだ公表していません。需要がないからだとは思いますが、スペイン語の規範的辞典「Diccionario de la Lengua Española」に収録されている9万3千語を基にした分析も近々されるかもしれません。