英語の歴史を簡単に振り返る|起源から現代英語まで

イギリスの地図

英語の歴史は1500年以上に及びますが、現在使われているような形が昔からあったわけではありません。ラテン語やフランス語などの外国語、大英帝国、植民地主義、活版印刷技術、テクノロジーの進歩など、さまざまな出来事によって形作られ、今なお変化し続けています。この記事では、英語の歴史を簡単にまとめ、現代英語の形成に影響を与えた出来事について振り返ります。

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英語の起源

英語のルーツは、北ヨーロッパのゲルマン民族が話していた、ゲルマン祖語(Proto-Germanic)いう言語に由来しています。

言語学的には、「インド・ヨーロッパ語族」の「ゲルマン語派」の「西ゲルマン語群」に属しています。ドイツ語とオランダ語は、同じ起源を持つ姉妹関係にあたります。5世紀頃、一部のゲルマン民族がイギリスへ移住したことで、ドイツ語やオランダ語とは異なる歴史を歩むことになりました。

ゲルマン語派の言語
  • 北ゲルマン語
    スウェーデン語、デンマーク語、ノルウェー語などの北欧語
  • 西ゲルマン語
    英語、ドイツ語、オランダ語など
  • 東ゲルマン語
    ゴート語など(死語)
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古英語 450~1150年

5〜7世紀頃にかけて、ゲルマン民族がイギリスへ移住して形成されたのが、古英語(Old English)です。

当時のイギリスでは、ケルト語が主に話されていましたが、徐々に北西に追いやられ、やがて英語が支配的になりました。アングロ・サクソン人(イギリスに渡ったゲルマン民族)は、ヘプターキー(Heptarchy)と呼ばれる7つの王国を設立し、この体制は9世紀まで続きました。

英語はさまざまな言語の影響を受けてきました。7世紀頃には、イギリスにキリスト教が伝わり、ラテン語の単語が取り入れられました。古英語ではゲルマン人が使っていた「ルーン文字」が使われていましたが、8世紀頃からラテン文字で書かれるようになりました。

また、8世紀頃からバイキングがイギリスに侵攻し、北ゲルマン語である古ノルド語の語彙が流入しました。古ノルド語に由来する単語は、egg(卵)、cake(ケーキ)、knife(ナイフ)、gift(贈り物)、sky(空)、get(得る)、take(取る)など、日常的なものがたくさんあります。

この時代に書かれた代表的な作品には『ベーオウルフ』や『アングロサクソン年代記』があります。

参考 英語の語彙に影響を与えた外国語

中英語 1150~1500年

1066年のノルマン・コンクエストの影響によって、フランス語ラテン語の語彙が大量に流入して形成されたのが、中英語(Middle English)です。中英語は15世紀末まで話されました。

イングランドがノルマン人に征服されると、政治・法廷・宮廷などの場では、アングロ=ノルマン語やフランス語が使用されるようになりました。

アングロ=ノルマン語とは、ノルマン語(Norman, Norman French)と英語が混ぜ合わさった言葉です。ノルマン語は、Norman Frenchとも呼ばれるように、言語学的にはフランス語の方言にあたります。

一方、庶民の間では、引き続き英語が話されました。14世紀までに、なんと約1万語のフランス語の単語が中英語に取り入れられました。流入したのは、特に政治、法律、軍事、食べ物に関する単語でした。例えば、beef(牛肉)やpork(豚)はフランス語由来ですが、cow(牛)やpig(豚)はゲルマン語に由来します。これは、肉を食べるのがフランス語を話す支配層で、家畜を飼育するのが中英語を話す庶民だったからです。

この時代は、語彙だけでなく、発音や文法も変化し、語尾の変化が減少しました。英語史において、ノルマン・コンクエストの影響は大きく、現代英語の語彙も、半分はラテン語やフランス語に由来しています。

この時代に書かれた代表的な作品には、チョーサーの『カンタベリー物語』があります。

近代英語 1500年~現在

1500年から現代までの英語は、近代英語(Modern English)と呼ばれています。

時代の区分は言語学者によって諸説あります。一般的に、初期近代英語(Early Modern English)と、後期近代英語(Late Modern English)の2つに分けられます。初期近代英語はおよそ1500年から1800年まで、後期近代英語は1800年もしくは1900年から現在までと分類されています。

初期近代英語 1500~1800年

15世紀頃に起こった「大母音推移(Great Vowel Shift)」以降に話された英語を、近代英語(Modern English)と呼んでいます。母音の発音の仕方が、大幅に変化したからです。

また、15世紀に活版印刷技術が発明されたことにより、標準英語(Standard English)が確立されました。というのも、活版印刷技術によって、書物の出版が劇的に効率化され、一般の人々にも広く流通するようになったからです。印刷するにあたり、正書法や句読法が一定化され、英語の文法がより明確になりました。これによって、人々は統一的な英語を使うようになりました。

近代英語で作品を書いた著名な作家には、ウィリアム・シェイクスピアやジョン・ミルトンがいます。この時代の文学の影響は大きく、現代英語に近い文法、語彙、音韻を持っています。そのため、シェイクスピアの作品は現代でも理解することができます。また、1755年には、サミュエル・ジョンソンによって、『英語辞典(The Dictionary of the English Language)』が出版され、単語のスペルや用法がより高度に標準化されました。

後期近代英語 1800年~現在

初期近代英語と後期近代英語(Late Modern English)の最も大きな違いは、語彙の数です。産業革命によって新しい技術や概念が発明され、膨大な数の言葉が造語されました。

大英帝国の支配地域(1920年)大英帝国の支配地域(1920年)Ibu007, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

また、16世紀から20世紀まで続いた大英帝国の植民地主義によって、英語が各植民地に普及しました。大英帝国の支配下は、20世紀前半には世界の4分の1に達し、さまざまな地域の外来語が英語に取り込まれました。例えば、ヒンディー語からは、pyjamas(パジャマ)、verandah(ベランダ)、jungle(ジャングル)などが、アボリジニの言語からはブーメラン(boomerang)などが借用されました。

20世紀にはアメリカ英語も台頭し始めます。世界の覇権はパクス・ブリタニカからパクス・アメリカーナに移行し、英語の世界的な優位は継続することとなります。英語は世界共通語になり、現在では世界で最も多い約15億人によって話されています。また、テクノロジー技術の飛躍的な発展によって、さまざまな新しい技術が英語で造語されました。現在の英語の語彙数は、100万語以上とも推計されています。

参照 英語はなぜ世界共通語になったのか
参照 英語にはいくつの単語があるのか

※後期近代英語は、現代英語(Present-Day English)と呼ばれることもあります。また年代区分は言語学者によって諸説あり、1900年以降を現代英語とする見方もあります。
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まとめ

今回は英語史について簡単にまとめました。

英語の時代区分とそれぞれの簡単な説明をまとめると、以下のようになります(※年代区分には諸説あります)。

  • 古英語(Old English)
    450~1150年
    ゲルマン語がイギリスに持ち込まれ、ケルト語、ラテン語、北欧語の影響を受けて形成される
  • 中英語(Middle English)
    1150~1500年
    ノルマン・コンクエストによりラテン語とフランス語の語彙が大量に流入
  • 近代英語(Modern English)
    1500年~現在
    母音の発音が大幅変化(大母音推移)
  • 初期近代英語(Early Modern English)
    1500~1800年
    活版印刷と文学により標準英語が確立
  • 後期近代英語(Late Modern English)
    1800年~現在
    植民地主義、グローバル化、テクノロジーの発展により語彙数が大幅に増加
    アメリカ英語の台頭
    英語の世界共通語化

英語は1500年以上にわたる歴史があり、ゲルマン語から分岐し、現代​​の世界共通語に至るまで、さまざまな変化を遂げてきました。現在では世界で最も多い約15億人に話され、テクノロジー技術の飛躍的な進歩によって、さまざまな言葉が造語され、今なお変化し続けています。

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