なぜ「sleep」の過去形は「sleeped」ではなく「slept」なのでしょうか。
一般的な解答としては、「sleep」は不規則動詞なので、過去形は「slept」になります。
語源の観点から見ると、このような不規則動詞は、英語の祖先であるゲルマン祖語に由来する本来語(ネイティブワード)に多くみられます。
英語の不規則動詞の大部分は、古英語に起源を持つネイティブ動詞です。一部の言語学者によれば、英語における不規則動詞は全体の約3%未満ともいわれています。とても希少ですね。英単語の半分近くは、フランス語やラテン語に由来しますが、これらの借用語のほとんどは、通常の活用形を採用しています。
「sleep」の語源を確認してみると、「sleep」は中英語の「slepen」、古英語の「slæpan」、ゲルマン祖語の「*slēpanan」、さらには印欧祖語の「*sleb-」(弱る、寝る)に由来します。
出典:sleep (v.) – Etymonline, sleep – Wiktionary
「sleep」と似たような変化をする動詞には、「keep/kept」「weep/wept」「sweep/swept」「creep/crept」などがあります。どれもゲルマン祖語に由来しています。
- keep(保つ) → kept
- weep(掃く)→ wept
- sweep(掃除する) → swept
- creep(忍び込む) → crept
これらの動詞は「母音交替(アプラウト, ablaut)」と呼ばれるプロセスを経て、動詞語幹の母音が変化して過去形になります。つまり、規則動詞のように単純な「-ed」を付加するパターンではなく、母音を変化させて過去形を形成します。「sleep」も同様に古いゲルマン語に由来する動詞であり、そのため「slept」という独特の形を取っています。
ちなみに、ゲルマン祖語はドイツ語やオランダ語の祖先でもあります。
多くの英単語の過去形は、時間の経過とともに「規則化」され、語尾に「-ed」が使用されるようになりました。一方で、「sleep」のように、昔からの形を保持する動詞もあります。その完全な理由は明確にはなってはいませんが、日常的な単語であることや、使用頻度が高いことなどの理由があげられます。
以前紹介した「最も使われる英語の動詞ランキングTOP100」を振り返ってみると、英語の動詞のトップ10は全て不規則動詞です。たとえば、be, have, do, say, goなどの動詞です。不規則動詞は数が少ないものの、英語において非常に重要な位置を占めており、日常的に広く使用されていることが窺えます。
「slept」の語尾の「-t」の追加に関しては、「keep/kept」と同じように、発音や理解をより明確にするためと考えられています。言語の形は、言語を使う人々の考え方や創造性が変化するため、常に流動的です。そのため、「sleep」や「slept」といった単語も、英語の変遷と共に変容してきました。
要約すると、「sleep」の過去形が「slept」となる理由は、古いゲルマン語に起源を持つ不規則動詞であるためです。ゲルマン語由来の動詞はしばしば母音交替(アプラウト, ablaut)と呼ばれるプロセスによって過去形を形成し、規則的な「-ed」を追加する代わりに、独自の過去形を持ちます。さらに、「sleep」のような頻繁に使用される一般的な動詞は、その歴史的な形を保持する傾向もあるようです。そのため、「slept」という不規則な過去形が「sleep」の標準的な形式として受け入れられています。