今回は英語の接尾辞-erの意味と由来をご紹介します
「語尾が-erで終わる英単語」についてはこちらでまとめています。
接尾辞-erの意味と由来
接尾辞-erが持つ意味と由来は凡そ以下の通りです。
- 名詞1(人・物・動作)
例: adviser (助言者)
由来: 中英語-er/-ere ← 古英語-ere ← ゲルマン祖語-ari*
*ラテン語の-arius(現代英語の-ary)からの借用の説あり - 名詞2(出身者・居住者)
例: villager (村人)
由来: 中英語-ere ← 古英語-ware ← ゲルマン祖語warjaz - 名詞3(仏語/羅語からの借用語)
例: dinner (夕食)
由来: アングロフランス語-er ← ラテン語-are - 動詞(反復)
例: twitter (さえずる)
由来: 中英語-eren ← 古英語-erian ← ゲルマン祖語-rona - 形容詞や副詞(比較級)
例: better (より良い)
由来: 中英語-ere ← 古英語-ra ← ゲルマン祖語-izon
参照:-er – Etymonline, -er – Wiktionary
-erの歴史を振り返ると、英語の祖先である中英語、古英語、ゲルマン語で古くから用いられ、実に様々な役割を担ってきました。あまり使われない単語も含めると、なんと10近い語源があります。全部を覚えるのはあまり実用的ではないので、今回は比較的日常的に使われるものだけをまとめました。
-erが作る単語を振り返ると、driver(運転手)やcooker(炊事道具)のような「人・物」に関する名詞や、glitter(きらきら輝く)のような「反復」を表す動詞、former(前の)のような「比較級」を表す形容詞や副詞など、あらゆる品詞を作ります。そのため、名詞を作る-tionや、形容詞を作る-ousのように、接尾辞で品詞を判断するのは少し困難かもしれません。
-erの意味が多様な理由は、結果的に現在ではどれも同じ-erで表記されているだけで、それぞれ異なる語源を持っているからです。-erは一見するとゲルマン語由来の伝統的な接尾辞に思えますが、ラテン語やフランス語由来の単語も吸収しているため、非常に多彩な特徴を持っています。
人を作る-erと-orと-ee
接尾辞の-erは、職業から出身者まで、あらゆる人に関する単語を作ります。
英語には人を表す接尾辞が-orや-eeなど10近くもありますが、-erを除けば、ほぼすべてがラテン語に由来しています(参照:人を作る接尾辞一覧)。そのため、-erはゲルマン語に由来する唯一ともいえる人を表す接尾辞です。例外もありますが、ゲルマン語系の単語は-er、ラテン語系の単語は-or、「~される人」は-eeが使われることが多いようです。
参照:-erと-eeの違い
例をいくつかあげると、baker(パン屋)、beginner(初心者)、leader(指導者)などは語根も接尾辞もゲルマン語由来です。ただ、-erは汎用性もかなり高く、interviewer(会見者)や researcher(研究者)のように、ラテン語に由来する語根につくこともあります。語根はラテン語、接尾辞はゲルマン語、というのも英語の多様性を表していますね。
ちなみに英語の-erは、ドイツ語でも-erと表記するように、その他のゲルマン語系の言語にも継承されています。
- 英語:-er
- ドイツ語:-er
- オランダ語:-er
- デンマーク語:-ere
- スウェーデン語:-are
- ルクセンブルク語:-er
- スコットランド語:-ar
多言語を学ぶ際はこのような似ている&共通している箇所からアプローチすると効率的ですね。ヨーロッパは日本と比べて多言語話者が多いのも、お互いの言語が家族のような関係にあることに依拠しています。仮定ではありますが、多くのヨーロッパ言語は1つのインド・ヨーロッパ祖語(Proto-Indo-European language)から派生したと考えられているため、文法や語彙に現在でも多くの類似点があるからです。
-erも結局ラテン語由来?
ここまで-erはゲルマン語由来の本来的な接尾辞ということで話を進めてきましたが、ラテン語からの借用であると考える学者もいるようです。
人に関する名詞を作る-erの由来となったのは、ゲルマン祖語の-ariですが、これがラテン語の-ariusからの借用だとする説があるからです。ゲルマン祖語の-ariとラテン語の-arius。綴りも似ていますし、どちらも「人や物」に関する名詞を作るという点も類似しています。ラテン語の-ariusは、現代英語の-aryや-ryに引き継がれているので、説によってはゲルマン語由来(と思われる)-erとラテン語由来の-aryは同族と言えます。英単語の50%以上はラテン語やフランス語に由来していますが、接尾辞に関してもラテン語からの影響は大きいようですね。
今回は-erが持つ多彩な意味や由来について振り返りました。 erという2文字だけでも、言葉が持つ歴史の奥深さを感じますね。