英語とスペイン語は似ている単語が多いので同時に勉強すると効率的です。研究によっては約20%の語彙が共通しているとも言われていますが、なぜ英語とスペイン語は似ている単語が多いのでしょうか。
その要因として、①同じ語族に属している、②ラテン語の影響、③フランス語の影響、④地理的な影響、などが考えられます。そこで今回は「英語とスペイン語に似ている単語が多い理由」について解説します。
要因① 同じ語族に属している
1つ目の要因は、どちらも同じ語族(language family)に属しているということです。
言語学的に、英語とスペイン語はどちらもインド・ヨーロッパ語族(Indo-European languages)に属しています。この語族は、インド・ヨーロッパ祖語(Proto-Indo-European)という共通の言語から誕生した言語グループで、英語やスペイン語などの欧州言語は大きな家族のような関係があります。そのため、現在でも同じ語源を持つ同根語が数多く存在しています。
実際に共通している単語をいくつか見てみると、インド・ヨーロッパ祖語から継承した有名な単語には「夜」「星」「父」「母」などがあります。
・夜 – night(英), noche(西), Nacht(独)
・星 – star(英), estrella(西), ster(蘭)
・父 – father(英), padre(西), père(仏)
・母 – mother(英), madre(西), madre(伊)
どの言語もスペルが完全に一致しているわけではありませんが、ある程度共通しています。このような同根語は数多く存在しますが、いくつか下記の記事で紹介しています。
語族(language family)だけでなく更に細かい語派(branch)まで同じ場合、言語の特徴はより類似する傾向があります。例えば、英語・ドイツ語・オランダ語はゲルマン語派、スペイン語・フランス語・イタリア語はイタリック語派に属しています。
- ゲルマン語派 → 英語・ドイツ語・オランダ語(西ゲルマン語群)、スウェーデン語、デンマーク語、ノルウェー語(北ゲルマン語群)
- イタリック語派 → スペイン語・フランス語・イタリア語・ポルトガル語
「他の言語にどのくらい同じ単語があるのか」を表した指標のことを、言語学では語彙の共通度(Lexical Similarity)と呼んでいます。言語研究団体のEthnologueやEZGlotの調査によれば、英語とドイツ語の語彙の共通度は約50~60%、スペイン語とイタリア語は約60~80%も一致しています。英語とスペイン語は約20%程度です。
インド・ヨーロッパ語族は名前の通り、インドからヨーロッパの広範囲にまで及ぶ、かなり大きな言語グループで、所属している言語の数は400以上もあると言われています。英語とスペイン語は語族同じですが、語派まで同じというわけではありません。
それでも、語彙の共通度が20%近くあるのは、次に紹介するフランス語とラテン語の影響が大きいからです。
要因② ラテン語の影響
2つ目の要因は、ラテン語の影響です。
「語彙の共通度」の記事でも紹介しましたが、英単語の約30%はラテン語に由来しています。
「英単語の起源になった外国語の割合」出典:Wikimedia Commons
上のグラフは英単語の起源となった外国語の割合です。このグラフによると、英単語の由来は、ラテン語が29%、フランス語が29%、ゲルマン語が26%、ギリシャ語が6%になっています。フランス語は俗ラテン語(話し言葉のラテン語)から派生した言語なので、英単語の半分近くはラテン語に由来するとも言えます。
ラテン語といえば古代ローマ帝国の公用語だったことで有名ですが、ローマ人とゲルマン人の言語接触が繰り返し行われたことによって、dish(皿)、butter(バター)、cheese(チーズ)など、現在でも馴染みのある日常的な単語がゲルマン民族に伝わりました。
その他にも、語尾が「tion」や「ción」で終わる単語はラテン語に由来しています。例えば、英語のactionとスペイン語のacciónなどです。語尾の「ion」はラテン語で「~すること、~するもの」を意味する名詞を作る働きがあります。
ラテン語由来の単語は他のヨーロッパ言語にも継承されています。例えば、「人気のある」を意味する「popular」は、ラテン語のpopularis(人のため、一般的な)が語源ですが、他の言語にも引き継がれています。英語には15世紀頃に、古フランス語(Old French)を経由して取り入れられました。
- ラテン語 popularis
- 英語 popular
- イタリア語 popolare
- フランス語 populaire
- スペイン語 popular
- ポルトガル語 popular
- ルーマニア語 popular
語尾のスペルは若干異なりますが、どの言語もそれほど変化していません。多言語学習をしている身としては羨ましいほどの類似度です。ただ、発音に関しては、それぞれの言語の特徴によって微妙に異なります。
スペイン語にとってラテン語は親言語のようなものです。そのため、英語とも間接的に共通することになったわけです。
次で紹介しますが、ラテン語由来の英単語は、古フランス語を経由していることもあります。例えば、solar(太陽の)やlunar(月の)はラテン語に由来していますが、古フランス語を経由して英語に取り入れられました。
参考:英語とスペイン語の同時学習は「空似言葉の罠」に気を付けよう
参考:スペイン語と英語の間違えやすい名詞一覧
要因③ フランス語の影響
3つ目の要因は、フランス語の影響です。
先ほども紹介した「英単語の起源となった外国語の割合」を振り返ると、フランス語の影響も大きく、英単語の約30%はフランス語に由来しています。
最も大きな影響は、1066年に勃発したノルマン・コンクエスト(Norman Conquest)です。この出来事によって、イングランドの貴族社会はノルマン人の支配下に置かれたからです。ノルマン人とは、北方系ゲルマン人の中でも、フランス北部のノルマンディに定住していた人々のことです。
11世紀以降、イングランドではノルマン人が話すノルマン語と英語が合わさったアングロ=ノルマン語(Anglo-Norman language)という言葉が話されるようになりました。アングロ=ノルマン語は、言語学的にはフランス語の言語変種(方言)にあたります。「イングランドで話されていたフランス語」ということから、アングロフレンチ(Anglo-French)とも呼ばれています。
アングロ=ノルマン語は15世紀まで約300年間に渡って貴族社会の間で話され、その結果、数多くのフランス語の語彙が英語に取り入れられました。
スペイン語の話に戻ると、スペイン語はフランス語と同じく俗ラテン語(話し言葉のラテン語)から派生した言語です。スペイン語にとってラテン語は親言語、フランス語は姉妹言語にあたります。
そのため、英語とラテン語・フランス語が類似しているように、スペイン語とも間接的ですが類似しているわけです。
要因④ 地理的に隣接している
4つ目の要因は、英語圏とスペイン語圏が地理的に隣接していることです。
スペイン語から英語に伝わった単語は、canyon(渓谷)、tornado(トルネード)、vanilla(バニラ)など、自然・文化・飲食物などに多く見られます。
イギリスとスペインは、イギリスとフランスほどではないですが、海を隔てて近接していますし、アメリカとメキシコは隣国です。先ほど紹介したcanyon(渓谷)も、メキシコのスペイン語から英語に取り入れられた単語です。アメリカ南部はスペイン領やメキシコ領だったこともあり、現在でもスペイン語の地名が数多く残っています。
まとめ
今回は「英語とスペイン語に似ている単語が多い理由」についてご紹介しました。
英語とスペイン語が似ている要因は、①同じ語族に属している、②ラテン語の影響、③フランス語の影響、④地理的に隣接している、という4つに大別することができます。
最も大きな要因は、英単語の半分近くがラテン語やフランス語に由来している、ということです。結果的に、ラテン語の子孫であり、フランス語と姉妹関係にあるスペイン語とも、何千近くもの単語を共有することになりました。
英語とスペイン語は似ている単語から覚えていくのも効率的な勉強法です。「英語とスペイン語の似ている単語」「英語とスペイン語の分野別単語集」「スペイン語と英語の単語と例文」などについてもまとめているので、英西同時学習の参考になれば幸いです。