「スペイン語を学ぶメリットは何?」「スペイン語は難しいの?」と考えている方も多いのではないでしょうか。この記事では、実際にスペイン語を学んだ私の経験をもとに、スペイン語の魅力と学ぶ理由についてご紹介します。
結論を先にまとめると、スペイン語には以下のメリットがあります。
- 需要が高い
スペイン語は世界中で話される言語で、ビジネスや旅行にも強みになります - 学びやすい
文法や発音の規則がしっかりしていて、初心者でも取り組みやすいです - 楽しい
スペイン語を学びながら、映画や音楽、文化なども楽しめます - ビジネスに有利
多くのスペイン語圏の国々でのビジネスチャンスに活かせます
スペイン語を学ぶことにはたくさんのメリットがあります。この記事では、これらのメリットをさらに詳しく解説し、スペイン語を学ぶことでどんな良い点があるのか、実際にどう活用できるのかをご紹介します。
スペイン語を学ぶメリット① 需要が高い
スペイン語を学ぶメリットの1つ目は、世界的に需要があることです。
スペイン語の現状を見てみると、①世界中で話者が多い、②色々な国で使える、③アメリカでも需要が高い、という特徴があります。
スペイン語は世界中で話者数が多い
セルバンテス文化センターの調査によると、2024年時点で、スペイン語を話す総人口は世界で約6億人に達しています。これは、英語や中国語に次いで、世界で3番目に多い言語となっており、その影響力の大きさがうかがえます。また、スペイン語の母語話者(ネイティブスピーカー)は約5億人にのぼり、中国語に次いで世界で2番目に多い言語になっています。
さらに、スペインの人口は約4700万人とほぼ横這いですが、スペイン語を話す国々が多いラテンアメリカやカリブ海地域の人口は約6億6千万人に達しており、今後も増加傾向にあります。この増加は、スペイン語の広がりと影響力を示しており、世界中でその存在感をさらに強めています。
出典:Centro Virtual Cervantes – El español en el mundo Anuario del Instituto Cervantes 2024
出典:“Latin America and the Caribbean Population” Worldometer
もう一つ注目すべき点は、年齢の中央値です。年齢の中央値とは、年齢を高い順に並べたときに真ん中に位置する年齢を指します。ラテンアメリカの年齢の中央値はおおよそ31~32歳で、日本の48.4歳やスペインの44.9歳と比較すると、若い世代が多いことが分かります。
スペイン語は色々な国で使える
スペイン語の強みは話者数が多いだけでなく、色々な国の公用語になっていることです。
公用語になっている国は中南米やカリブ地域を中心に21か国にも及びます。これは英語(59)、フランス語(34)、アラビア語(23)に次いで世界で4番目に多い数です。ラテンアメリカには33か国あるので、3分の2はスペイン語が公用語ということになります。
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色々な国で話されているということは、旅行や観光でも役立ちます。
ペルーのマチュピチュ
私も南米に住んでいる時に、チリ、ペルー、ボリビア、コロンビア、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイ、メキシコ、ブラジルなどを訪れました。南米を旅行するなら英語が通じない地域もあるので、スペイン語(やポルトガル語)は「便利」というより「必須」に近いです。南米の50%はスペイン語を話し、48%はポルトガル語(ブラジル1か国のみ)という統計結果も出ています。
参考 南米で話されている言語ランキング
参考 南米で話されている公用語・言語一覧【国別】
スペイン語とポルトガル語は別の言語ですが、どちらも俗ラテン語(話し言葉のラテン語)から派生した姉妹言語です。そのため、相互理解可能性(mutual-intelligibility)が高く、単語の80~90%は共通しているという研究もあります。
スペイン語はインターネットでも良く使われている言語です。
2020年の調査によると、ネット上にあるスペイン語のウェブサイト数は中国語、英語、トルコ語に次いで世界で4番目に多く、ネットの利用人口の割合は、英語、中国語に次いで3番目に多い数になっています。
参照:“Usage statistics of content languages for websites” W3Techs
参照:“INTERNET WORLD USERS BY LANGUAGE Top 10 Languages” Internet World Stats
スペイン語はアメリカでも需要が高い
スペイン語は、アメリカでも学習者数と話者数が増加しています。
MLA(米国現代言語協会)が、アメリカの大学で「どの外国語の履修者が最も多いのか」を調査したところ、1970年から現在まで約50年間、最も学ばれている第二言語はスペイン語でした。アメリカでは、毎年約70万人の大学生・院生がスペイン語を履修していますが、その数は2位のフランス語と4倍以上の差があります。
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アメリカでは、6000万人以上がスペイン語を話せるといわれています。これは、ラテンアメリカにルーツを持つヒスパニックが増加していることが要因です。米国勢調査によると、ヒスパニックの人口は、2010年は約5000万人でしたが、2020年は約6200万人に達しています。これは全人口の約18%で、アメリカ人の5人に1人はヒスパニックという計算になります。
参照:“HISPANIC OR LATINO ORIGIN BY RACE” United States Census Bureau
アメリカのスペイン語話者は、世界でも2番目に多い人数です。この数は、スペインの約4600万人やコロンビアの約5000万人より多く、メキシコの約1億2000万人に次ぐ数です。2050年にはアメリカのスペイン語話者は1億以上になる、とも推計されています。スペイン語は米国全土で通じるというわけではありませんが、話者数が増加傾向であることを考えると、スペイン語の重要度も高くなる、と言えそうです。
参考 アメリカで話されている言語ランキング
参考 アメリカで増加するスペイン語話者の現状と今後
スペイン語を学ぶメリット② 学習しやすい
スペイン語を学ぶメリットの2つ目は、学習しやすいことです。
スペイン語は難しいイメージもあるかもしれませんが、私は比較的に学びやすい言語だと思っています。その理由は、①発音がわかりやすい、②英語と似ている、の2つがあげられます。順に見ていきたいと思います。
スペイン語は発音が分かりやすい
スペイン語が学びやすい1つ目の理由は、基本的にローマ字読みで通じるからです。
なぜほとんどローマ字読みなのかというと、スペイン語の母音は日本語と同じで「a, i, u, e, o」の5つだからです。また、スペイン語の単語の半分は母音で構成されています(参照:スペイン語で最も使用されるアルファベット)。一方、諸説ありますが、英語の母音の数は26個、もっとも母音が多い中国語では約36個もあるといわれています。
普段から聞き慣れていない、使い慣れていない発音に慣れるには時間がかかりますよね。そのような理由からも、スペイン語は取りかかりやすい言語と言えるわけです。
そもそもアルファベット(ラテン文字)は見ただけで読み方がわかる表音文字ですが、英語はスペルと発音が乖離している場合が多くあります。例えば「A」という文字だけでも様々な発音があります。
【ə】 about, abilityなど
【eɪ】take, makeなど
【æ】apple, catなど
【ɑ:】start, chargeなど
【ɔ:】water, walkなど
上記は一例です。フォニックス(Phonics)などの音声学習法もありますが、例外もありますし、そもそも表音文字と言うにしては複雑です。
スペイン語は発音の仕組みが分かりやすいので、単語が覚えやすい・自己学習がはかどるというメリットもあります。
日本人は英語が苦手といわれている大きな理由は、その複雑な発音にあると思います。母音数が同じでローマ字読みのスペイン語は、日本人にとって親しみやすいので、単語も覚えやすくなります。先ほどの「popular」の例もそうですが、私は「ポピュラー」より、スペイン語読みの「ポプラル」の方が発音しやすいです。発音が正しいかどうかの確認作業も英語ほど必要でなくなるので、結果的に自己学習もはかどります。
ただ、気をつけたい点として、スペイン語にも「L」と「R」の発音の違いはあるので、全く問題がない!というわけではありません。実際に自分のスペイン語が通じるかどうかも、ネイティブとの会話で確認する必要はあります。
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それでも、発音が日本語と似ていることは、スピーキングやリスニングにおいて十二分のメリットがあると思います。
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スペイン語は英語と似ている
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単語を一から覚えるのだるいんだけど。
スペイン語の単語を一から覚えるのって大変ですよね。そこで朗報なのが、スペイン語には英語と似ている単語がいくつもあることです。先ほど紹介した「popular」という単語も同じスペルでしたが、その他の例をいくつか紹介します。
英語 | スペイン語 | 日本語 |
---|---|---|
Air | Aire | 空気 |
Alarm | Alarma | 警報 |
Animal | Animal | 動物 |
Color | Color | 色 |
Conversation | Conversación | 会話 |
Family | Familia | 家族 |
Final | Final | 最後の |
Natural | Natural | 自然の |
Idea | Idea | 考え |
Information | Información | 情報 |
Total | Total | 全体の |
どれも似ていますよね。
発音は同じではないですが、スペイン語の発音はローマ字読みなので、むしろスペイン語の方が簡単だと思います。ここで紹介したのはほんの一部で、研究によっては、英語とスペイン語の語彙は20%も共通しているといわれています。
「英語とスペイン語の似ている単語」については別の記事でまとめているので良ければ下記からご覧ください。
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英語とスペイン語の学びやすさについては面白いデータもあり、アメリカの外交官を育成しているアメリカ外交官養成局(Foreign Service Institute)によれば、スペイン語は「より英語と似ている言語(Languages more similar to English)」であり、「最も習得が簡単な言語」にカテゴリーされています。
この結果は、あくまで「英語ネイティブ」にとっての調査結果なので、日本語ネイティブにとってスペイン語が簡単というわけではありません。ですが、ある程度英語を勉強している人にとっては、英語ネイティブと同じようにスペイン語は学びやすい言語になるはずです。
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スペイン語を学ぶメリット③ 楽しく学べる
スペイン語を学ぶメリットの3つ目は、スペイン語は楽しく学べることです。
スペイン語学習は義務教育ではないので、楽しくなければ長続きしないかもしれません。スペイン語には料理、音楽、スポーツ、文化など魅力的なジャンルが豊富なので、自分の趣味や興味と組み合わせれば持続可能なモチベーションを見つけられるかもしれません。
料理が楽しい!
スペイン料理やラテンアメリカ料理には美味しい料理が沢山あるので、スペイン語を知っていると料理を作るのがより楽しくなります。最近は日本語でも海外のレシピが紹介されていますし、スペイン語でレシピを見るのも勉強になります。
料理をしながら、楽しみながら料理や食べ物に関する語彙を増やしていきたいですね。
アヒージョ(Ajillo)
タコス(Tacos)
パエリア(Paella)
セビチェ(Ceviche)
エンパナーダ(Empanada)
お腹が空いてきますね。
その他にも、チュペ(Chupe)、チュロス(Churros)、ガスパチョ(Gazpacho)、トルティージャ(Tortilla)などが美味し料理が沢山あります。
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私も料理が好きなので、ここで紹介した料理は全部家で作ったことがあります
最近はコロナ禍で自炊する機会も増えていると思うので、自炊疲れでレシピに困っている人にもおすすめかもしれません。食材も、最近は大型スーパー、KALDI、業務スーパーなどで手軽に入手できるので、日本に居ても簡単に作れます。
最近は日本語でも海外のレシピが紹介されていますし、スペイン語でレシピを見るのも勉強になります。料理や食べ物に関する語彙を増やすキッカケにもなると思います。
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ぜひ料理をしながら語彙を増やしてみてください。
音楽が魅力的!
スペイン語の音楽も魅力的です。
スペイン語の音楽は世界的にも注目されていて、2017年8月~2020年11月に「Youtubeで最も再生された曲」は、ルイス・フォンシの『Despacito』でスペイン語の曲でした。他にもShakira、Ricky Martin、Enrique Iglesiasなど、世界的に有名なスペイン語歌手もたくさんいます。Gipsy Kingsが歌っている『Volare』 はテレビCMでも聴いたことがある人が多いと思います。
元はイタリア語の曲なのでサビ部分はイタリア語のままですが、それ以外の歌詞はスペイン語です。
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スペイン語だけでなく、多言語学習にも良いですね。
サッカー観戦が楽しい!
スペインといえばサッカーと言っても過言ではないですよね。
スペインのラ・リーガ(La Liga)にはレアルマドリードやバルセロナなどの世界的に有名なチームがありますし、久保建英選手や中井卓大選手など、スペインで活躍する日本人選手も増えました。これからの日本代表を担う存在で、増々サッカーが楽しみですね。
スペイン語を知っていればサッカー観戦もより楽しくなります。Golazo!(ゴール)、Contra ataque(カウンター)、Pase largo(ロングパス)、Centro(センタリング)、Primer palo(ニア)など、試合を見ながら楽しく勉強もできます。
これなら忙しくても「ながら作業」で勉強出来ますね。
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スペイン語を学ぶメリット④ ビジネスに使える
スペイン語を学ぶメリットの4つ目は、ビジネスにも使えることです。
スペイン語は経済やビジネスでも注目されています。例えば、2018年12月30日に発効したTPP(環太平洋パートナーシップ協定)には、メキシコ、チリ、ペルーなど公用語がスペイン語の国々も参加しています。中南米で最も経済規模が大きい国は、ポルトガル語が公用語のブラジルですが、それに次ぐ規模のメキシコも注目度が高まっています。
特に注目したいのがメキシコで、近年はメキシコに進出する日系企業が増加しています。2019年の外務省の「海外進出日系企業拠点数調査」によると、メキシコに進出した企業は1299件にも上り年々右肩上がりです。
というのも、少し専門的な話ですが、ブラジルはメルコスール(MERCOSUR)という「関税同盟」をアルゼンチンなどの隣国と締結しています。これはヨーロッパの欧州連合(EU)みたいな国際機関ですが、EUと比べてより自国の産業を守る保護主義やブロック経済の特徴を持っているといわれています。これは太平洋側に位置し、TPPに加盟しているメキシコ、チリ、ペルーとは対照的です。今後どのような方向性になるかは分かりませんが、MERCOSURは2019年にEUとFTA(自由貿易協定)を締結したものの日本との関税は継続中です。
そこで重要性が高まっているのが、開放的な経済政策を掲げているメキシコです。
さらにメキシコは米国や南米市場向けの物流拠点として注目されています。メキシコに進出している日系企業の半分以上が製造業ですが、これは、メキシコに集中的に工場を置いて、そこからアメリカや南米に輸出するという構図だからです。主なメリットには以下の点があると考えられています。
- 人件費が安い
- 物流コストが低い
- 米国への関税が免除
アメリカと比べて人件費が安いことや、アメリカと陸続きなので運搬コストが安くすむことが理由としてあげられます。他にもメキシコはNAFTA(現USMCA)に加盟しているので、アメリカ向けの輸出の関税が削減されることも大きな恩恵です。
ただ最近では賃金の上昇や、政権交代によりこれまでの開放的な経済政策からの転換も危惧されています。それでも、中南米の市場規模はアジアと同程度とされ、ポストアジアとしても注目されています。政治経済の安定性という面では不安はあるものの、日本経済にとって重要な地域であることは変わりありません。
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中南米というと遠いイメージですが、太平洋を隔てたら日本の隣国とも言えますね。
スペイン語を学ぶデメリット – 注意すべき点
スペイン語を学ぶことは、もちろん都合の良い事ばかりではなく、デメリットもあります。
動詞の活用が複雑
1つ目のデメリットは、動詞の活用が複雑な点です。
スペイン語は主語によって動詞の形が100近くも変化し、不規則動詞も数百はあるとされているので、全部覚えるのは途方もなく大変です。動詞の活用はスペイン語で一番難しい点ともいわれています。
地域によって表現が異なる
2つ目のデメリットは、国や地域によって微妙に表現が異なることです。
スペイン語は21か国の公用語になっているように、広範な地域で話されているので発音・語彙・文法などにおいてそれぞれの特徴や使い方があります。例えば南米では2人称複数形のvosotros(君たち)は使われませんが、スペインでは使われます。
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英語の方が優先度は高い
3つ目のデメリットは、語学の優先順位は依然として英語の方が高いことです。
世界的にも日本においても、スペイン語より英語の需要があるのは明らかです。英語がまだ学びたりないのなら、英語を優先した方がメリットは多いかもしれません。
まとめ
今回は、スペイン語を学ぶメリットやデメリットについてご紹介しました。
まとめると以下になります。
- スペイン語は需要がある
- スペイン語は学習しやすい
- スペイン語は楽しく学べる
- スペイン語はビジネスにも使える
英語の方が依然として重要性は高いのは事実ですが、スペイン語は世界的に話者数が増加しているため、これから更に需要が高まる注目の言語です。世界と比較すると日本での人気は低いですが、学習者が少ないということは、希少価値があるともいえます。
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今回の記事が、スペイン語を学ぶきっかけに、少しでもなったら嬉しい限りです。チャオ!