多言語学習は似ている単語から覚えるのが効率的な方法です。ヨーロッパの言語の多くは元々同じ言語だったため、現在でも似ている単語が数多く存在します。そこで今回は「英語と似ている外国語の単語10選」をご紹介します。取り上げる言語は主に英語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語、フランス語、ポルトガル語です。
英語と似ている外国語の単語
英単語の由来や語源に関しては、Online Etymology Dictionary、Wiktionary、ジーニアス英和大辞典などを参考にしています。
air 空気
英語のair(空気)は12世紀頃に古フランス語のair(大気、天気、そよ風)を経由して英語に伝わりました。語源をさかのぼると、ラテン語のaer(空気、空、下層大気)や、古代ギリシャ語のaer(霧、もや、雲)という言葉に由来します。
- 英語 air
- イタリア語 aria
- スペイン語 aire
- フランス語 air
- ポルトガル語 ar
- ルーマニア語 aer
ラテン語から派生したロマンス諸語では、「空気」を意味する単語はどれもラテン語のaerが継承されています。英語はゲルマン語派の言語なのでロマンス諸語ではありませんが、ラテン語やフランス語に由来する語彙が半分近くもあると言われています。
area 面積
英語のarea(面積、地域、範囲)はラテン語のarea(平地、空地、広場)に由来します。
- 英語 area
- イタリア語 area
- スペイン語 área
- フランス語 aire, area
- ポルトガル語 área
フランス語のaireとareaは「二重語(doublet)」です。二重語とは、1つの言語の中において、同じ語源を持つけど意味・見た目・発音などが違う単語のことです。違う単語に分裂することで、言葉や表現がさらに豊かになっていきますね。
base 土台
base(土台、基礎、基地)は14世紀頃に古フランス語のbas(深さ、低さ)を経由して英語になりました。さらにさかのぼると、ラテン語のbasis(土台、基盤)や、古代ギリシャ語のbasis(歩み、足踏み)に由来します。
- 英語 base
- ドイツ語 Basis
- イタリア語 base
- オランダ語 base
- スペイン語 base
- フランス語 base
- ポルトガル語 base
同義語のbasis(基礎、根拠、主成分)も、baseと同じ語源を持っている同根語(cognate)です。なぜbaseとbasisは同じ語源なのに意味が違うのかと言うと、伝わった経緯が異なるからです。baseはフランス語経由ですが、basisはラテン語を経由して英語になりました。意味が微妙に違うので、二重語とも言えますね。英語の語彙はとても豊富で100万個以上もあると言われていますが、それはこの二重語が一因になっています。
discus 円盤
「円盤、レコード、ディスク」を意味する英語のdiscus, disc, diskは、どれも「円盤、輪、大皿」を意味するラテン語のdiscusやギリシャ語のdiskosに由来しています。
- 英語 discus (disc, disk)
- チェコ語 disk
- ドイツ語 Diskus
- トルコ語 disk
- イタリア語 disco
- オランダ語 discus
- スペイン語 disco
- フランス語 disque
- ポルトガル語 disco
- ルーマニア語 disc
- 日本語 ディスク
色々な言語で同じ語源の単語が使われています。その他にも、英語のdish(皿、料理)やdesk(机)も同じ語源を持つ二重語です。形が丸いものは生活の中に沢山あるので、色々な言葉が同じ語源から作り出されて来たんですね。
era 時代
英語のera(時代)はラテン語のaera(時代)に由来します。ラテン語では元々「お金の計算」のことを意味し、それが転じて「お金の計算→時間の計算→時代」という意味になったのだそうです。
- 英語 era
- ドイツ語 Ära
- イタリア語 era
- オランダ語 era
- スペイン語 era
- フランス語 ère
- デンマーク語 æra
- ポルトガル語 era
ラテン語のaeraも、ロマンス語だけでなく色々な言語に採用されていますね。
finish 終える
finish(終える、完成する)は古フランス語のfenir(止める、終える)から借用され、さらにさかのぼるとラテン語の finire(制限する)やfinis(境界、限界、終わり)に由来します。
- 英語 finish
- イタリア語 finire
- スペイン語 finalizar
- フランス語 finir
- ポルトガル語 finalizar
finishの同根語は、スペイン語やポルトガル語ではfinalizarですが、一般的にはterminar(終わる)の方がよく使われているようです。
英語のfinal(最後の)、fine(立派な、元気な)、finalize(完成させる)などもラテン語のfinisに由来しています。finalizeはfinalに動詞を作る接尾辞の-izeを付け足した言葉で、19~20世紀頃から使われているようです。
- 英語 final
- イタリア語 finale
- スペイン語 final
- フランス語 final
- ポルトガル語 final
globe 球体
globe(球体、地球)やglobal(球状の、地球全体の)は、どちらも古フランス語を経由して英語に伝わりました。どちらも「球体」に関する言葉ですが、globeは16世紀頃から「地球」のことを、globalは1890年代からフランス哲学の発展により「世界的規模の、ユニバーサル」に関することも意味するようになりました。
- 英語 globe, global
- イタリア語 globo, globale
- スペイン語 globo, global
- フランス語 globe, global
- ポルトガル語 globo, global
globalize(グローバル化する)という用語は世界経済システムが近代的になった1950~60年代から使われ始め、globalismやglobalizationなどの派生語も誕生しました。
plate 皿
plate(皿、平皿、料理)は古フランス語のplate(薄い金属片)を経由して英語になりました。語源をさかのぼるとラテン語のplata、ギリシャ語のplatys(広い、平らな)に由来します。
- 英語 plate
- ドイツ語 Platte
- イタリア語 piatto
- スペイン語 plato
- フランス語 plat
- ポルトガル語 prato
pla-から始まる単語の語源をさかのぼると、インド・ヨーロッパ祖語の「広がり(*plat-)」という言葉に由来します。例えば、place(場所)、plane(平面、飛行機)、plant(植物)、platform(プラットフォーム)などです。どれも広がるイメージがある単語ですよね。
region 地域
region(地域、地方)はアングロ=ノルマン語のregioun、古フランス語のregion(土地、地域)、ラテン語のregionem, regio(地区、領土)に由来します。アングロ=ノルマン語とは、11~15世紀頃のイングランドで話されていた、英語とノルマン・フレンチ語が合わさった言語です。
- 英語 region
- ドイツ語 Region
- イタリア語 regione
- スペイン語 región
- フランス語 région
- ポルトガル語 região
ロマンス諸語ではアクセントやチルダ(波線符号)の位置が違うので注意が必要です。チルダとは「ã」や「ñ」などの発音を区別するための符号です。
zone 地帯
zone(地帯、区域)は14世紀頃にラテン語のzona(ベルト)から借用されました。
- 英語 zone
- ドイツ語 Zone
- イタリア語 zona
- スペイン語 zona
- フランス語 zone
- ポルトガル語 zona
語尾はneとnaのどちらかになる傾向がありますね。
なぜ英語と似ている単語が多いのか
そもそもなぜ英語やヨーロッパ言語は似ている単語が多いのでしょうか。冒頭や記事の途中でも少し言及しましたが、その理由を大別すると下の2つになります。
- ヨーロッパの言語は元々同じ言語だった
- 英語はラテン語やフランス語から沢山の単語を借用した
ヨーロッパ言語の多くはインド・ヨーロッパ祖語(Proto-Indo-European)という共通の祖先から誕生したと考えられていて、いわば親戚のような関係にあるからです。2つ目は、英単語の約半分はラテン語やフランス語に由来しているからです。これ1066年のノルマン・コンクエスト(Norman Conquest)が一因で、イングランドがフランス語の方言を話すノルマン人の支配下に置かれたため、フランス語の単語が大量に英語に流入しました。
このことなどに関する詳細については下の記事でまとめています。
まとめ
今回は「英語と外国語の似ている単語」をご紹介しました。
多言語学習は似ている単語から覚えるのが効率的な学習方法です。ヨーロッパの言語は共通の祖語から生まれたと仮定されているため、現在でも似ている単語が数多くあります。
「スペイン語と英語の似ている単語」に関しては、個別にまとめているので宜しければこちらからご覧ください。現在合計約1700個の似ている単語をまとめています。