以前「語尾が-idで終わる英単語」をまとめました。そこで紹介した単語は主に日常生活で使う単語(形容詞)でしたが、接尾辞の-idの意味や由来は様々で、天文学から医学まで実に幅広い分野の単語を形成します。そこで今回は英語の接尾辞-idの由来や意味について振り返りたいと思います。
接尾辞の-idの語源は辞書によって異なりますが、由来が重複している箇所など、凡そ共通していることをまとめると以下のようになります。
- 「性質・状態」を表す形容詞を作る
由来: 英語-id → フランス語-ide → ラテン語-idus - 「動物学・天文学・生物学・化学・医学・王朝」に「属するもの」を意味する名詞を作る
由来1: 英語-id → ラテン語-idis/-id-/-is → ギリシャ語-idos/-id-/-is
由来2: 英語-id → ラテン語-ides(複-idae/-ida) → ギリシャ語-ides
接尾辞の-idは形容詞を作る
接尾辞の-idの役割は形容詞を作ることです。
「語尾が-idで終わる英単語」で紹介した単語は、1つ目の「性質・状態」を表す形容詞に該当します。例えば、acid(酸っぱい)、liquid(液体の)、solid(固体の)、splendid(華麗な)、valid(有効な)など、比較的に日常生活で使われる単語です。語源を確かめるために、英語のacid(酸っぱい)が他の言語で何と言うのかを確認してみます。
英語 :acid
ラテン語 :acidus
フランス語 :acide
イタリア語 :acido
スペイン語 :ácido
ポルトガル語:ácido
英語の-idが、フランス語の-ide、ラテン語の-idusと関係があるのが分かりますね。-idusで終わるラテン語の単語は、子孫のフランス語に継承され、1620年代に英語にも流入しました。ラテン語から派生したイタリア語、スペイン語、ポルトガル語などにも同じ語源の単語が継承されています。語尾は言語ごとに異なりますが、それぞれ言語の特徴を表していますね。
ラテン語 :-idus
フランス語 :-ide
イタリア語 :-ido
ポルトガル語:-ido
スペイン語 :-ido
英語 :-ido
どの言語も形容詞を作る接尾辞です。
ちなみに、英語とスペイン語に関しては「英語のidとスペイン語のidoで終わる単語」でまとめているので、スペイン語を勉強している方がいらしたら参考になれば幸いです。多言語学習は同じ語源を持つ同根語(cognate)から覚えると効率的です。
接尾辞の-idは名詞を作る
接尾辞の-idは名詞も作ります。
「語尾が-idで終わる英単語」では紹介しませんでしたが、-idは「動物学・天文学・生物学・化学・医学・王朝」などに関する名詞を作ります。例えば、canid(イヌ科の)、chromatid(染色分体)、Achaemenid(アケメネス朝)、Leonid(しし座流星群)などの単語です。どれも難易度の高い専門的な単語ですね。
Etymonline、Wiktionary、Lexico.com、Dictionary.comなどのオンライン辞典を比較しましたが、名詞を作る-idは色々な由来があるようなので、確かなことは定かではありません。
参照:-id – Etymonline
参照:-id – Wiktionary
参照:-idus – Wiktionary
参照:-id – Lexico.com
参照:-id – Dictionary.com
共通している箇所をまとめると、英語の-idは、ラテン語の-idisや-ides(複数形は-idae, -ida)、さらにはアルファベット表記ですがギリシャ語の-idosや-idesに由来します。そのため、ラテン語の-idusに由来し、形容詞を作る接尾辞の-idとは、語源が異なると言えます。
Wiktionaryでは接尾辞の-idの語源の1つとして、「-oidの異形」という説明が唯一なされています。接尾辞の-oidは「~のような、似た」を作る接尾辞で、例えばhuman(人間)+oidでhumanoid(人間のような→人型ロボット)という単語になります。-oidと-idは別の意味を持つ接尾辞ですが、どちらもラテン語やギリシャ語に由来していることもあり、何かしらの繋がりはあるかもしれません。長くなってしまったので、接尾辞の-oidについてはまた次回にしたいと思います。