スペイン語に由来する外来語|食べ物・飲み物・料理

パエリア

1492年にコロンブスがアメリカ大陸を「発見」して以降、トマト、ナス、カボチャ、アボカドなど多様多彩な食物がスペイン語を経由して世界中に伝わり、現在の日本でも日常的に食されるようになりました。今回は、食べ物・飲み物・料理に関するスペイン語の外来語の意味・語源・由来についてご紹介します。

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アセロラ Acerola

アセロラはスペイン語で「サンザシ属」の植物を意味する「acerola」に由来します。 山査子(さんざし)とは、薬用や美容に使われているバラ科の植物で、アセロラのような小さい赤い実が特徴です。本来スペイン語のacerola(アセロラ)はこの山査子のことを指す言葉でした。

15世紀頃に南アメリカに訪れたスペイン人が、山査子に似ている小さくて赤い果実を発見し、acerolaと呼んだことから、この果実のことをacerolaと呼ぶようになりました。サクランボのような見た目から、英語ではバルバドスチェリー(barbados cherry)と呼ばれています。

アヒージョ Ajillo

アヒージョはスペイン語で「小さなにんにく」を意味する「ajillo」に由来します。 ajoは「にんにく」、-illoは愛称や小さいことを表す指小辞です。

アヒージョはスペインの代表的な小皿料理であるタパス(tapas)の一種です。スペイン語ではアヒージョの前に食材名をつけてガンバス・アル・アヒージョ(gambas al ajillo)などのように呼びます。ガンバス(gambas)は海老のことで、他にも魚介やチキンなど多彩な種類があります。

アボカド Aguacate

アボカドは英語の「avocado」、更にはスペイン語の「aguacate(アグアカテ)」に由来します。 英語のavocadoはスペイン語のaguacateの英語表記です。語源をさかのぼるとナワトル語で「睾丸」を意味するāhuacatl(アーワカトル)に由来します。

メキシコの遺跡では、1万年以上前から食べられていた痕跡がに残っているそうです。アボカドは「森のバター」や「生命の源」とも呼ばれ、脂肪分やミネラルをバランスよく含んでいるので、ギネスブックには「最も栄養価の高い果物」として登録されています。南米の一部地域ではpalta(パルタ)とも呼ばれています。ちなみに、スペイン語で「アボガド」というと弁護士(abogado)のことを指します。もちろん果実のアボカドの意味はありません。一方、フランス語ではアボカドと弁護士が同じ単語(avocat)なんだそうです。ややこしいですね。

カカオ Cacao

カカオはスペイン語の「cacao」に由来します。 語源をさかのぼると、マヤ語の「カカオ(kakaw)」やナワトル語の「カカオの木の豆(cacahuatl)」に由来します。15世紀以降にスペイン語風の発音でcacaoと呼ばれるようになりました。

カカオの学名はギリシャ語で「神々の食物(theobroma cacao)」という意味があり、これはアステカ神話に由来します。カカオは神々、つまり王様や富裕層の食べ物だったからです。メソアメリカでは古くから飲料や薬用として利用され、紀元前1900~900年頃の遺跡からはカカオ飲料の残留物が付着した容器が見つかっています。また、その貴重性から通貨としても使用されたそうです。種子のカカオ豆(cacao beans)がチョコレートやココアの原料になりますが、ココア(cocoa)の名前の由来は原料のカカオ(cacao)に由来しています。

ガスパチョ Gazpacho

ガスパチョはスペイン語の「gazpacho」に由来しますが、 語源には諸説あり、スペイン語の「ふけ(caspa)」や「残り物(caspicias)」、イタリアのトスカーナ語の「肉の煮込み(guazo, guazato)」、モサラベ語の「かけら、断片(caspa)」、アッカド語の「バラバラにして配布する(kasâpu)」などの説があります。

元々ガスパチョは、パン、水、オリーブオイル、酢を混ぜたシンプルな料理でした。現在では色々な種類があり、その中で最も国際的に広まったのがアンダルシアのガスパチョで、19世紀頃にトマトが追加されて現在よく知られている赤いスープになりました。

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サルサ Salsa

サルサはスペイン語で「ソース」全般を意味する「salsa」に由来します。 語源をさかのぼると、ラテン語の「塩辛い(salsus)」や「(sal)」が語源です。元々調味料と言えば塩だったことに由来するのかもしれません。

サルサは液状調味料の総称なので、国や地域によって様々なバリエーションがあります。最も一般的なのは、トマトや唐辛子をベースにした「サルサ・ロハ(salsa roja)」で、スペイン語で「赤いサルサ」という意味があります。他にも「緑のサルサ(salsa verde)」や「生のサルサ(salsa cruda)」などもあります。音楽やダンスのサルサも同じ語源で、ソースのサルサのように「色々なジャンルが混ざっている」ことから名付けられました。

サングリア Sangría

サングリアはスペイン語やポルトガル語で「出血、瀉血(しゃけつ)」を意味する「sangría」に由来します。 語源をさかのぼると、スペイン語で「」を意味する「sangre」に由来します。

サングリアとは、ワインに柑橘類などの果物や果汁を入れて作られる、スペインやポルトガルのフレーバードワインの一種で、果実はオレンジ、レモン、リンゴ、バナナなど多岐に渡ります。EU(欧州連合)の法律では、スペインとポルトガルだけが「サングリア」のラベルを付けることが認められているそうです。

タコス Tacos

タコスはスペイン語で「軽食」を意味する「taco」の複数形「tacos」に由来します。 語尾に「s」をつけて複数形にすると、日本でもよく聞くtacos(タコス)になりますが、日本語では単数形と複数形の区別はありません。最近では大型スーパーなどで冷凍のトルティーヤも売っているので手軽に作れます。

タバスコ Tabasco

タバスコはメキシコ南東部の州名「タバスコ(Tabasco)」に由来します。 語源には諸説あり、メキシコ先住民言語のマヤ語で「湿った地球、場所(tlapalco)」、「われらの8匹のライオンの主(tab-uaxac-koh)」、「所有者がいる場所(tla-uashka-ko)」などに由来する説があります。現在でも広大な湿地が広がっていますが、強力な支配者もいたのかもしれません。

原材料であるタバスコペッパー(tabasco papper)は、メキシコ・タバスコ州原産の唐辛子で、州名にちなんで命名されました。この唐辛子から作られるホットソースは、1650年代頃から食されていました。その後、商品名のタバスコは1868年頃にアメリカのエドモンド・マキルヘニー(Edmund McIlhenny)によって考案されました。開業してから現在まで約150年間、アメリカ・ルイジアナ州のエイブリー島内でのみで製造しているそうです。

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チュロス Churros

チュロスは「揚げ物を揚げる音」のオノマトペ(擬音語)で、スペイン語の「churro」の複数形「churros」に由来します。 言われてみると、揚げ物の音は「チュロチュロチュロ」とも聞こえますね。日本語のオノマトペでは「ジュー」や「パチパチ」でしょうか。チュロスの起源には諸説あり、スペインの羊飼いによって作られたとする説や、中国の揚げパンのようなものがヨーロッパに伝わったとする説があります。

チョコレート Chocolate

チョコレートは英語の「chocolate(チョコレート)」、更にはスペイン語の「chocolate(チョコラテ)」に由来します。 語源をさかのぼると、メキシコ先住民の言葉に由来し、ナワトル語で「カカオの水」を意味するcacaua ātl(カカワトル)や「酸味や苦みがある水」を意味するxocolātl(ショコラトル)、マヤ語の「熱い」とアステカ語の「水」を合わせた「熱い水(chokolātl)」などの説があります。ちなみにショコラ(chocolat)はフランス語由来です。

テキーラ Tequila

テキーラはメキシコ中西部ハリスコ州の都市「テキーラ(Tequila)」のスペイン語名に由来します。 元々リュウゼツランから作られる蒸留酒のことは「メルカル」といい、ナワトル語で「調理したリュウゼツラン(mexcalli)」という言葉に由来します。テキーラもリュウゼツランから作られますが、1994年に原産地の「テキーラ」の名前でブランド化しました。サボテンから作られるという誤解がよくあるそうです。

トマト Tomate

トマトは、英語の「tomato」、更にはスペイン語の「tomate」に由来します。 語源をさかのぼると、ナワトル語で「膨らんだ果実」や「脂肪水」を意味する「tomatl」に由来します。

メソアメリカでは紀元前500年前から栽培化され、ヨーロッパには16世紀にスペイン人征服者のエルナン・コルテスによって初めて持ち込まれました。当初は有毒であると信じられ、主に観賞用として栽培されていたそうです。イタリアでは比較的早くから食され、トマトは「黄金のリンゴ」を意味する「ポモドーロ(pomodoro)」と呼ばれました。イギリスでは「毒リンゴ(poison apple)」とも呼ばれ、食用化したのは18世紀からでした。日本も明治以降に食用化されています。

ナタ・デ・ココ Nata De Coco

ナタ・デ・ココはスペイン語で「ココナッツの上澄み皮膜」を意味する「nata de coco」に由来します。 「nata」の和訳である「上澄み皮膜」は『現代用語の基礎知識 1994』からの引用です。

スペイン語の「nata」を英西辞典で調べると「(dairy) cream」や「skin(on boiled milk)」という意味があります。一つ目の意味が「生クリーム」で、こちらを当てはめると「ココナッツクリーム」という訳になります。二つの目の意味が「ココナッツの液体の表面に出来る皮膜」で、こちらを当てはめると「ココナッツの上澄み皮膜」という訳になります。

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バーベキュー Barbacoa

バーベキューは、英語の「barbecue」、更にはスペイン語の「barbacoa(バルバコア)」に由来します。 語源をさかのぼると、カリブ海先住民・タノイ族の「木の枠組み(barbakoa)」という言葉に由来します。

1492年にコロンブスがアメリカ大陸に上陸した際に、タノイ族が火に当たらないように肉や魚を調理するのを見たのだそうです。現在のメキシコでは、地下のオーブンで柔らかくなるまでじっくり調理した肉のことも指します。バーベキューに該当するスペイン語は他にもasado(アサード)やparrillada(パリリャーダ)があります。

パエリア Paella

パエリアはバレンシア語で「フライパン」を意味する「paella」が語源です。 バレンシアにはパエリアでよく使われる広くて浅い伝統的な鍋がありますが、この鍋を含めて鍋全般を「パエリア」と呼ぶそうです。これがいつしか鍋の名前ではなく、料理の名前として他のスペインの地方や世界に広まりました。

パエリアの起源は9~10世紀にムーア人が稲作を始めた時代までさかのぼります。ムーア人はアラビア語を話すイスラム教徒の人々で、8世紀頃にイベリア半島に侵入しました。それ以降、米と魚を使ったキャセロール(casseroles)という料理を食べる習慣が確立され、15世紀まで米が主食になったそうです。その後、現代よく見るパエリアは19世紀頃にバレンシアで定着しました。パエリアはスペイン料理の1つとされていますが、スペイン人にとってはバレンシア地方の料理と認識されているそうです。

パパイア Papaya

パパイアはスペイン語の「papaya」に由来します。 語源をさかのぼると、カリブ海や中南米で話されているアラワク語のpapáiaに由来します。ちなみにアラワク(arawak)という名前は主要作物だったキャッサバの根に由来します。キャッサバはタピオカの原料として有名ですね。パパイアは、東南アジアや台湾、沖縄などでは野菜として食され青パパイヤ(green papaya)とも呼ばれています。

ハラペーニョ Chile Jalapeño

ハラペーニョはメキシコ・ベラクルス州の州都「ハラパ(Xalapa)」のスペイン語名に由来します。ハラパ(Xalapa)という言葉は、ナワトル語の「砂(xālli)」と「水の場所(āpan)」を合わせた造語で「砂の中の泉」という意味があります。ハラペーニョはピクルス、サルサ、詰め物、揚げ物、燻製など幅広く調理されています。

マテ茶 Mate Cocido

マテ茶は原料の植物「yerba maté(イェルバ・マテ)」の名前に由来します。 yerbaはスペイン語で「ハーブ、薬草」、mateはケチュア語で「ひょうたん、コップ」を意味するmatiに由来します。元々は文字通り「ひょうたんハーブ(gourd herb)」と訳されていたそうです。

マテ茶はビタミン、ミネラル鉄分、カルシウムが多く含まれるため「飲むサラダ」ともいわれています。また、野菜があまり栽培出来ないアンデス地方の高地では、薬用としても用いるそうです。ボンビージャ(bombilla)というフィルター付きのストローを使って飲むのが伝統です。最近は聞きませんが、太陽のマテ茶という飲み物も一時期流行ったような気がします。

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まとめ

今回は「スペイン語の外来語(食べ物・飲み物・料理)」の意味・語源・由来をご紹介しました。紹介した単語の中にはスペイン語だけが語源ではないものもありますが、日本語にはスペイン語経由、もしくはスペイン語の発音で伝わったため「スペインの外来語」に区分しています。

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