江戸時代の日本は、ヨーロッパで唯一オランダと交易を持っていたため、オランダ語経由でさまざまな西洋の学問や知識を取り入れて来ました。現在では、オランダ語由来の言葉だとは分からないほど、日本語として定着しています。今回は、オランダ語の外来語の意味・語源・由来についてご紹介します。
ドイツ語 オランダ語 ポルトガル語
フランス語 生活 食べ物 お菓子 芸術
スペイン語 生活 食べ物 気象 地名 国名 動物
日本に外来語が伝わった経緯・歴史
ドイツ語 オランダ語 ポルトガル語 フランス語
- アジア Azië
- アスベスト Asbest
- アパルトヘイト Apartheid
- アムステルダム Amsterdam
- アルカリ Alkali
- アルコール Alcohol
- アロエ Aloë
- エーテル Ether
- エキス Extract
- エレキテル Elektriciteit
- お転婆 Ontembear
- オブラート Oblaat
- オランダ(ネーデルラント) Nederland
- オルゴール Orgel
- ガス Gas
- カバン Kabas
- ガラス Glas
- カン Kan
- ギプス Gips
- クッキー Koekje
- コーヒー Koffie
- コック Kok
- コップ Kop
- ゴム Gom
- コルク Kurk
- コンパス Kompas
- サーベル Sabel
- シロップ Siroop
- スコップ Schop
- スポイト Spuit
- ソーダ Soda
- ダム Dam
- タラップ Trap
- デッキ Dek
- ドック Dok
- 白金 Platina
- ビーカー Beker
- ビール Bier
- ヒステリー Hysterie
- ピンセット Pincet
- ピント Brandpunt
- ブランデー Brandewijn
- ブリキ Blik
- ペスト Pest
- ペン Pen
- ペンキ Pek
- ホース Hoos
- ポンプ Pomp
- ポン酢 Pons
- マスト Mast
- メス Mes
- モルヒネ Morfine
- モルモット Marmot
- 八重洲 やえす
- ランドセル Ransel
- ランプ Lamp
- リウマチ Reuma
- レッテル Letter
- レトルト Retort
- レンズ Lens
- ワッフル Wafel
- まとめ
アジア Azië
日本語のアジアという発音はオランダ語のAziëに由来します。
江戸時代の蘭学者・宇田川榕菴(うだがわようあん)が1822~25年に書いた『遠西医方名物考』という書物に「アジア」という発音の記録が残っています。
ヨーロッパ言語に関してはラテン語や古代ギリシャ語のAsiaに由来します。それ以前については、古代メソポタミアのアッカド語で「日の出、東」を意味するasuが語源と言われていますが定説はありません。少なくとも古代ローマや古代ギリシャから見て東方を指す言葉ではあったようで、当時はトルコにあるアナトリア(Anatolia)を指していました。アナトリアは小アジア(Asia Minor)とも呼ばれています。
地理的見解が拡大すると共にアジアの定義も拡張され、現在ではヨーロッパを除くユーラシア大陸全般を指すようになりました。
アスベスト Asbest
アスベストはオランダ語やドイツ語のasbestに由来します。
語源をさかのぼると、ギリシャ語で「消すことが出来ない(ásbestos)」という言葉に由来します。ギリシャ語でaは「ない」、sbestosは「消すことが出来る」を意味する言葉で、火をつけても消えることがなかったことから名付けられました。
鉱物繊維なので、日本語では石綿(いしわた、せきめん)とも呼ばれています。
アパルトヘイト Apartheid
アパルトヘイトはアフリカーンス語で分離、隔離(apartheid)という意味があります。
アフリカーンス語はオランダ語から派生した言語で、クレオール言語に位置付けられることもあります。アパルトヘイトは南アフリカ共和国における白人と非白人を差別的に規定した人種隔離政策で、1948年から1991年6月まで続きました。
アムステルダム Amsterdam
アムステルダムはアムステル川(Amstel)とダム(dam)が合わさった言葉です。
海抜が低いオランダでは水位を調整するためにダムがよく利用され、そこから街が発展して都市名や地名になることがよくあります。ダムが名前になっている街は他にも、ロッテ川のダムから発展したロッテルダム(Rotterdam)や、スヒー川のスヒーダム(Schiedam)、エー川のエダム(Edam)などがあげられます。
アルカリ Alkali
アルカリはオランダ語のalkaliに由来します。
語源をさかのぼると、ラテン語のalcali、更にはアラビア語の「植物の灰(al-qiliy)」に由来します。この語はカリウム(kalium)と同じ語源です。アルカリは8~9世紀頃にイスラムの錬金術師ジャービル(Jābir ibn Hayyān)によって発見され、日本では江戸時代の蘭学書『厚生新編』でアルカリという語が初めて確認されました。
アルコール Alcohol
アルコールはオランダ語のalcoholに由来します。
語源には諸説ありますが、アラビア語で「粉状物質、さらさらしたもの」を意味するal-khwlという言葉に由来するそうです。alがアラビア語で定冠詞を意味することから、この説が有力になりました。
古来から、化粧品、防腐剤、殺虫剤などで用いられていました。
アロエ Aloë
アロエはオランダ語のaloëに由来します。紀元前からエジプトやギリシャなどで利用され、日本には鎌倉時代に伝わりました。薬用にもよく用いられるため「医者いらず」とも呼ばれています。
エーテル Ether
エーテルはオランダ語のetherに由来します。
語源をさかのぼるとギリシャ語で「明るい空気、上空、大空」を意味するaitherという語に由来し、四元素(火風水土)を拡張した第五元素(天体世界)として考えられていました。
神学以外にも使われている言葉で、物理学では光を伝えると考えられていた媒質のこと、化学ではエチルエーテルの総称のことを指します。ゲームの回復アイテムとしても有名ですね。
エキス Extract
エキスはオランダ語で「抽出」を意味するextract(エキストラクト)の略称に由来します。
exは「外」、tractは「引き出す」という意味があります。語源をさかのぼるとラテン語のextractusという語に由来し、英語のextract、フランス語のextrait、スペイン語のextractoなどと同じ語源になります。
栄養成分を凝縮した液体(エキス)という意味以外にも、抜粋や要約という意味でも使われています。
エレキテル Elektriciteit
エレキテルはオランダ語で「電気、電流」を意味するelektriciteitが訛った語です。
エレキテルは医療などで使われる静電気の発生装置のことで、簡略化してエレキとも言います。1751年頃にオランダ人が幕府に献上した記録が残っています。1776年には蘭学者の平賀源内が復元・自製したことでも知られています。
お転婆 Ontembear
お転婆はオランダ語で「手に負えない」を意味する動詞ontembear(オテンバール)に由来します。
語源には諸説あり、江戸時代に運送を担った卸伝馬(ごてんま)に由来する説もあります。以前は「天馬」という表記も用いられたそうですが、明治時代以降に「転婆」という表記が定着しました。
オブラート Oblaat
オブラートはオランダ語のOblaatやドイツ語のOblateに由来します。
本来はキリスト教の聖体(ミサで食すパン)のことを意味し、現在は苦い薬や飴などを包む薄い膜のことを指します。日本には19世紀頃にオランダの製薬会社から紹介されました。
「オブラートに包む」という表現も、苦みを緩和することに由来しています。
オランダ(ネーデルラント) Nederland
オランダの英語名であるザ・ネザーランズ(the Netherlands)は、オランダ語で「低地の国」を意味するNederland(ネーデルラント)に由来します。
日本語名であるオランダはポルトガル語に由来し、オランダ西部にあるホラント州(Holland)が語源になっています。なぜポルトガル語由来なのかというと、戦国時代にポルトガル人宣教師から欧州の地名が伝わり一般化されたためです。
英語でも以前はHollandと呼ばれていましたが、現在ではthe Netherlandsが一般的です。正式名称はオランダ語でKoninkrijk der Nederlande。Nederlandは単数形で、海外領土を含めた場合は複数形のNederlandenになります。
オルゴール Orgel
オルゴールはオランダ語やドイツ語で「オルガン」を意味するorgelに由来します。発音はオランダ語ではオルヘル、ドイツ語ではオルゲルになります。英語ではオルゴールと呼ばずにmusic boxやmusical boxと言います。
ガス Gas
ガスはオランダ語のgasに由来します。
17世紀頃にフランドルの化学者ヘルモント(Jan Baptista van Helmont)によって初めて使われました。ガスの発音は、古代ギリシャ語で「混沌、形が決まっていないもの」を意味するchaos(カオス)のフランドル風の発音と言われています。フランドルはオランダ・ベルギー・フランスにかけての地域です。
信憑性は低いですが、ギリシャ語のgeest(幽霊、魂)に由来するという説もあるようです。
カバン Kabas
カバンの語源は諸説あり、オランダ語で「バック」を意味するkabas(カバス)や、中国で「文挟み」を意味する夾板(キャバン)に由来する説があります。
ガラス Glas
ガラスはオランダ語のglas(フラス)に由来します。
英語ではガラスもグラスもglassと表記しますが、本来は同じ言葉だったからです。ガラスはオランダ語経由、グラスは英語経由で日本に伝わったため、日本語では違う発音・スペルになりました。
言語学では、このような意味やスペルが違うのに同じ語源を持つ単語を二重語と呼んでいます。
カン Kan
カンはオランダ語で「水差し、壺」を意味するkanや英語のcanに由来します。
幕末にブリキの缶詰が西洋から日本に伝わった際に、カン(kan, can)という音から「釜」を意味する罐(カン)という漢字が使われるようになりました。その後、簡略化された缶が定着し、戦後の国語改革によって常用漢字として採用されました。
ギプス Gips
ギプスはオランダ語やドイツ語で「石膏」を意味するgipsに由来します。ギプスの歴史は古く、メソポタミア文明から用いられたそうです。gipsはオランダ語やドイツ語由来の言葉で、英語ではcastが使われています。
クッキー Koekje
クッキーはオランダ語で「小さなケーキ」を意味するkoekjeに由来します。似ている言葉にビスケット(biscuit)がありますが、日本では脂肪分が多いものをクッキー、少ないものをビスケットと呼ぶそうです。
アメリカではこのようなお菓子全般をクッキー(cookie)、イギリスでは逆にビスケットと呼ぶそうです。複雑ですね。
コーヒー Koffie
コーヒーはオランダ語のkoffie(コーフィー)が訛った語です。
日本には18世紀頃にオランダ人によって持ち込まれました。英語のcoffeeもオランダ語経由です。語源を遡ると、アラビア語でコーヒーを意味するqahwa(カフワ)という言葉に由来します。アラビアでは気分を高揚させるために飲まれていたそうです。
コーヒーの歴史は古く、有史以前から飲まれていたとする説もあります。
コック Kok
コックはオランダ語で「料理人」を意味するkokに由来します。類似語にフランス語由来のシェフ(chef)がありますが、シェフは料理長、コックは料理する人全般を指します。
コップ Kop
コップはオランダ語のkopやポルトガル語のcopo由来します。
似ている言葉にカップがありますが英語由来の言葉です。カップもコップも英語ではcupで同じですが、日本語では取っ手の有無で区別しています。取ってがないのがコップ、取っ手があるのがカップです。
外来語や二重語は語彙の豊かさをもたらしますね。
ゴム Gom
ゴムはオランダ語で「ガム」を意味するgomに由来します。
ゴムはゴムノキの樹液(ラテックス)から作られる天然ゴムと、人工的に作られる合成ゴムに大別されています。天然ゴムはメソアメリカの先住民によって使用されていたのが最初と言われ、15世紀にクリストファー・コロンブスによって初めてヨーロッパへ伝わりました。合成ゴムは1914年頃に生産量に限度がある天然ゴムの代用品としてドイツで初めて生産されました。
英語はrubberで、「こするもの」という意味があります。
コルク Kurk
コルクはオランダ語のkurk、更にはラテン語の「樹皮、皮質(córtex)」という言葉に由来します。弾力性・防湿性・不浸透性が高いため、断熱材や防音材にも用いられています。
コンパス Kompas
コンパスはオランダ語で「方位磁針」を意味するkompasに由来します。
円を描く道具のコンパスと羅針盤のコンパスは同じ語源です。語源をさかのぼると、ラテン語の「円、回路(compassus)」という言葉に由来します。英語はどちらもcompassですが、円を描く方のコンパスは、近代オランダ語ではpasserと言うそうです。
サーベル Sabel
サーベルはオランダ語のsabelやドイツ語のsäbelに由来します。
14世紀頃にドイツ地方で使用されたのが始まりとされていますが詳しいことは分かっていません。最終的にはハンガリー語のszablyaに由来するという説もありますが、鎌型の剣(ケペシュなど)は古代エジプトなどで既に用いられていました。
英語ではsabreやsaberなど、日本語ではセーバーやセイバーと表記します。
シロップ Siroop
シロップはオランダ語のsiroop(シロープ)、更にはラテン語やアラビア語の「飲料(siropus, sharāb)」という言葉に由来します。英語はsyrupです。
スコップ Schop
スコップはオランダ語で「鋤、小さなシャベル」を意味するscopに由来します。
類似語のシャベル(shovel)は英語に由来する言葉です。JIS(日本産業規格)によると、足をかけるところがあるものをショベル(シャベル)、ないものをスコップと定義しています。
スポイト Spuit
スポイトはオランダ語で「注ぎ口・針」を意味するspuitに由来します。
本来オランダ語のspuitにはスポイトという意味なく、日本には誤用で伝わりました。スポイトはオランダ語ではpipet、英語ではpipette(ピペット)やdropper(ドロッパー)と言います。
ソーダ Soda
ソーダはオランダ語で「重曹」を意味するsodaに由来します。
語源をさかのぼると、イタリア語やラテン語のsoda、さらにはアラビア語の「頭痛(sudā‘)」という言葉に由来します。最初に作られた炭酸水はレモネードに重曹を加えたものだったそうです。
ダム Dam
ダムは中英語や中期オランダ語のdamに由来します。
damという語はオランダの旧市街の名前によく用いられ、40以上の場所の名前になっています。例えば1120年頃には「Obdam」という街が、1150~1500年頃にはアムステルダム(Amsterdam)やロッテルダム(Rotterdam)が発展しました。
タラップ Trap
タラップはオランダ語で「階段、はしご」を意味するtrapに由来します。
英語のtrap(罠、トラップ)と同じスペルですが同じ語源の同根語です。祖先の印欧祖語で「走る、歩く、踏む」などを意味する言葉(*dreb-)から派生したようです。
タラップは英語ではgangwayやaccommodation ladderといいます。
デッキ Dek
デッキは「表面、甲板」を意味するオランダ語のdekや英語のdeckに由来します。語源をさかのぼると、中期オランダ語の「屋根、カバー(dec)」という言葉から発展したそうです。
ドック Dok
ドックはオランダ語のdokに由来します。
語源をさかのぼると、中期オランダ語の「水路、運河(docke)」、古イタリア語の「導管、水路(doccia)」、中世ラテン語の「導管(ducta)」という言葉に由来します。
ドックは船の建造・修理・荷の積み下ろしのための設備や施設のことです。
白金 Platina
白金はオランダ語で「白い金」を意味するwitgoudを日本語訳した言葉です。オランダ語でwitは「白」、goudは「金」を意味します。
Wiktionaryによると、オランダ語のwitgoudは昔は白金(プラチナ)のことを意味していたそうですが廃語になり、現在では文字通りホワイトゴールド(white gold)のことを意味するそうです。ホワイトゴールドはプラチナとは別の金属で、日本語では白色金と表します。
白金の別称であるプラチナはスペイン語由来の言葉で、18世紀頃にスペイン人が銀に似た白色の金属を「ピント川の小さな銀(platina del Pinto)」と呼んだことに由来します。
ビーカー Beker
ビーカーはオランダ語のbekerに由来します。語源をさかのぼると、ギリシャ語の「水差し、ワインの瓶(bîkos)」という言葉に由来します。英語はbeakerです。
ビール Bier
ビールはオランダ語のbierに由来します。
語源をさかのぼると、ラテン語の動詞「飲む(bibere)」という言葉に由来します。日本には1613年に平戸(長崎県)に持ち込まれ、1724年にはオランダの商船が江戸幕府8代将軍・徳川吉宗に献上した記録が残っています。
日本語では当て字で麦酒、英語はbeerです。
ヒステリー Hysterie
ヒステリーはオランダ語やドイツ語のhysterieに由来すします。
語源をさかのぼると、ギリシャ語の「子宮(hustéra)」という言葉に由来します。古代ギリシャでは、ヒステリーが子宮の異常によって起こると考えられていたためです。近代以降では、フランスの神経病学者ブリッケ(Paul Briquet)が初めてその存在を提唱しました。
英語はhysteriaです。
ピンセット Pincet
ピンセットはオランダ語のpincetに由来します。
語源をさかのぼると、フランス語の「はさむもの(pince)」、ラテン語の「刺す(punctio)」、古代ギリシャ語の「こぶし(pugme)」という言葉に由来します。
日本語では鑷子(せっし)、英語はtweezersです。
ピント Brandpunt
ピントはオランダ語で「焦点」を意味するbrandpuntに由来します。
オランダ語のbrandpuntは直訳すると「火災の点」という意味があります。brandはオランダ語で「大火災」、puntは「点」のことです。英語はfocusです。
ブランデー Brandewijn
ブランデーはオランダ語で「焼いたワイン」を意味するbrandewijnに由来します。
英語ではbrandy-wineとも呼ばれ、wineが省略されてbrandyになりました。ブランデーは果実酒から作られる蒸留酒のことですが、フランスでは「オー・ド・ヴィー(eau-de-vie)」と呼ばれ、「命の水」という意味があるそうです。漢字では「葡萄地酒」と表記します。
ブリキ Blik
ブリキはオランダ語で「板金、薄い板」を意味するblikに由来します。英語ではsheet metalやtin plateなどといいます。
ペスト Pest
ペストはオランダ語のpestに由来します。
ペストはペスト菌の感染により起こる感染症で、皮膚が紫黒色になることから「黒死病(black death)」とも呼ばれます。過去に3度のパンデミックをもたらしたそうです。英語はplagueで、英語のpestは伝染病を媒介する害虫や害獣などのことを意味します。
ペン Pen
日本語のペンはオランダ語のpenに由来します。
語源をさかのぼると、ラテン語の「羽(penna)」という言葉に由来します。元々はガチョウなどの羽根の先にインクをつけて書いていました。
古代エジプトでは葦(アシ)の茎を使用して文字を記していたそうです。
ペンキ Pek
ペンキはオランダ語で「ピッチ(粘着性樹脂)」を意味するpekという言葉に由来します。
ピッチ(pitch)は塗装や防水として利用される物質のことで、植物樹脂から作られるものはロジン(rosin)といいます。
ペイキの英語はpaint(ペイント)です。
ホース Hoos
ホースはオランダ語のhoosに由来します。
江戸時代にオランダ船から日本に伝わったそうです。火事が多発した江戸時代ですが、ホースが当時の日本に定着しなかったのは、火消しの基本が破壊消火だったためとも言われています。
ポンプ Pomp
ポンプはオランダ語のpompに由来します。
ポンプの歴史は古く、紀元前1500年頃から古代エジプトで灌漑のために用いられていました。ポンプは外部の動力によって液体や気体を移動する装置のことなので、機能的には心臓もポンプです。
英語のpumpもオランダ語由来です。
ポン酢 Pons
ポン酢はオランダ語の果汁入りカクテル「ポンチ・パンチ」の略称「pons(ポンス)」に由来します。
江戸時代にポンスの「ス」が「酢」と間違って解釈されてポン酢と呼ばれるようになりました。その後、酸味がある果汁のこともポンスと呼ぶようになりました。
ポンカンやデコポンと酢の組み合わせが語源ではないみたいですね。
マスト Mast
マストはオランダ語のmastに由来します。
語源をさかのぼると、ゲルマン祖語の「棒(mastaz)」という言葉に由来します。本来は帆を張るための垂直棒のことで、現在では信号旗・無線アンテナなどに利用されています。
メス Mes
メスはオランダ語で「ナイフ」を意味するmesに由来します。メスは和製外来語で、英語やオランダ語などのヨーロッパ言語ではmesではなくscapel(スカペル)と言います。
モルヒネ Morfine
モルヒネはオランダ語のmorfineに由来します。
モルヒネは医療用の鎮痛薬ですが、1804年にドイツの薬剤師ゼルチュルナー(Friedrich Wilhelm Adam Sertürner)が世界で初めてアヘンから分離しました。ゼルチュルナーは「夢のように痛みを取り除く」という理由から、この薬をギリシャ神話の夢の神「モルペウス(Morpheus)」にちなんで「モルフィウム (morphium)」と名付けました。
モルモット Marmot
モルモットはオランダ語で「マーモット」を意味するmarmot(マルモット)に由来します。
モルモットはテンジクネズミ族の動物、マーモットはリス科の動物で、それぞれ別の動物です。江戸時代にテンジクネズミを持ち込んだオランダ商人が、マーモットと勘違いしたことから誤用として広まったそうです。
テンジクネズミは英語ではguinea pig、オランダ語ではcaviaといいます。
八重洲 やえす
八重洲はオランダ人航海士のヤン・ヨーステン(Jan Joosten van Lodensteyn)の名前に由来します。
ヤン・ヨーステンは1600年に日本に漂着したリーフデ号のオランダ人乗組員です。彼の日本名「耶楊子(ヤヨス)」がなまって「やえす」と呼ばれるようにりました。
ヨーステンが来日する以前は、八重洲は江戸城の内堀沿いを指す言葉として使われていました。
ランドセル Ransel
ランドセルはオランダ語で「背嚢(はいのう)」を意味するranselに由来します。
背嚢は背中に背負うカバンのことです。幕末に政府が洋式の軍隊制度を導入した際に、背嚢の呼び名としてランドセルを使い出したのが始まりです。オランダ語の発音はランセルやラヌセルで、それが訛ってランドセルになりました。
由来には諸説あり、ドイツ語で「兵士」を意味するlandserを語源とする説もあります。1885年頃にドイツの軍事顧問団を日本へ招聘した際に、歩兵バックが採択されています。
ランプ Lamp
ランプはオランダ語のlampに由来します。語源をさかのぼると、ラテン語の「たいまつ(lampas)」や印欧祖語の「輝き(leh₂p-)」に由来します。
類似語のランタン(lantern)はランプ(lamp)と同じ語源です。
リウマチ Reuma
リウマチはオランダ語のreumaに由来します。
語源をさかのぼると、ギリシャ語の「流れ(rheuma)」や「流れに苦しむ(rheumatizomai)」という言葉に由来します。リウマチは関節などに炎症・腫れ・痛みが生じる疾病のことですが、痛みや炎症が「流れるように」体全体に広がることから命名されました。
英語はrheumatismです。
レッテル Letter
レッテルはオランダ語で「文字」を意味するletterに由来します。
レッテルは和製外来語で、オランダ語のletterは単に「文字」という意味しかなく、日本語のように「ラベル」という意味はありません。英語のletter(文字、手紙)と同じスペルですが、以前はオランダ語でも「手紙」という意味があったそうです。
レッテルやラベルの英語はlabelです。
レトルト Retort
レトルトはオランダ語で「蒸留器、高圧釜」を意味するretortに由来します。
レトルトは袋詰めした食品を高圧高温で殺菌する圧力釜のことで、転じて、レトルトパウチ食品(retort pouch foods)のことを指します。パウチは袋のことです。
レンズ Lens
レンズはオランダ語のlensに由来します。
語源をさかのぼると、ラテン語で「レンズマメ(ヒラマメ)」を意味するlēnsに由来します。凸レンズの形がレンズマメに似ていることから名付けられたそうです。
ワッフル Wafel
ワッフルはオランダ語やドイツ語で「蜂の巣」を意味する焼菓子wafelに由来します。
ワッフルの原型は古代ギリシャのオベリオス(obelios)というパンケーキです。17世紀頃にアメリカに伝わり、ワッフル(waffle)と呼ばれるようになりました。
フランス語のゴーフル(gaufre)や英語のウエハース(wafers)と同じ語源です。
まとめ
今回は、「日本語になったオランダ語の外来語」の意味・語源・由来を一覧形式でご紹介しました。紹介した単語の中には、オランダ語だけが語源ではないものもありますが、日本語にはオランダ経由、もしくはオランダ語の発音で伝わったため、「オランダ語の外来語」に区分しています。