英語の語彙数は一体いくつ存在するのか、疑問に思うことってありますよね。英語の語彙数に関する説や研究はさまざまですが、一般的には20万語もしくは100万語だといわれています。
今回は「英語にはいくつの単語が存在するのか」というテーマで紹介していきます。
英語の語彙数の定義は難しい
まず先に述べなければならないのは、英語の語彙数を正確に定義することは難しいという点です。
なぜなら、言葉は流動的であり、生き物のような存在だからです。人為的に作られた人工言語とは異なり、自然言語は常に変化し続けているため、正確な単語数を数えることはほぼ不可能です。造語と廃語のように、新しい言葉が誕生することもあれば、時間の経過によって廃れてしまう言葉もあります。特に、目に見えない話し言葉はあいまいで、地域によって存在する方言は、文語ではなく口語から変移していきました。
方言といえば、言語と方言の区分も難しい問題で、ユネスコのように、language(言語)とdialect(方言)で区別するのではなく、どちらもlanguageとして定義されることもあります。
“英語”の語彙数を定義するのも難しい問題です。例えば、他の言語から取り入れた借用語や外来語は、どこまでその言語の言葉として数えるべきなのでしょう。日本語の場合、アジェンダやエビデンスは日本語として数えるべきなのでしょうか。YESなら、サステナビリティならどうでしょう。含まれるかどうかは頻度によって変わるのでしょうか。
また、特定の集団や場所でのみ話されている、隠語・略語・スラング・ネット用語などをどうカウントすべきかという問題もあります。そのほかにも、take, takes, taken, took, takingなどの活用形をどのように数えるべきかに関して、明確に一致した見解はありません。これらの定義や基準をすべての言語間で統一するのは容易ではありません。
- どこまでが「言語」なのか?
⇒ 借用語・外来語・方言の問題 - どこまでが「単語」なのか?
⇒ 隠語・スラング・ネット用語・略語・活用形の問題
英語の語彙数をどのように数えるか?
語彙数を正確に測定することは困難ですが、①辞書の単語数や、②分析会社の結果を参考にする方法があります。
辞書の単語数なら20~60万語
「辞書の単語数≒語彙数」と考えるのが1つ目の方法です。
1989年に出版された「Oxford English Dictionary(第2版)」は、過去1000年間にわたる集大成といえる英語辞典です。見出し語数は約29万語(291,500)もあり、子見出し語などを含めると、総項目数は約60万語(615,100)にも及びます*1。ただ、この中には現在使われていない廃語(47,156語)も含まれているので、現在使用中の単語は約17万語(171,476 words in current use)という記事もあります*2。
参照*1:OED editions – Oxford English Dictionary
参照*2:How many words are there in the English language? – Lexico.com (リンク切れ)
ただ、辞書には全ての単語が収録されているわけではありません。まだ辞書に追加されていない単語は、何十万語もあると推測されています。語彙の数を測定するあいまいさを考慮して、大まかに100万語と見積もる言語学者もいます。ただ、この数値も25万語程度の振り幅があってもおかしくないといわれています。
参照:“How many words are there in English?” Merriam-Webster
最新のIT用語を含めれば100万語
さまざまな分野で新しい用語が生まれていますが、特に顕著なのが、ITやテクノロジーの分野における造語スピードです。
例えば、アメリカのメディア分析会社であるグローバル・ランゲージ・モニター(Global Language Monitor, GLM)は、現在の英単語の数はおよそ100万語(1,066,095.9)であると推計しています。そのほかの調査主体でも、おおよそ100万語と推定する見解が多いようです。
参照:“Rise and Fall of England as an English Language Word Generator” The Global Language Monitor
興味深いことに、上述のGLMによると、新しい単語は98分ごとに1つ作られているそうです。概算すると、1日あたり約14.7単語、1年あたり5400単語が作られている計算になります。単語数は飛躍的に増加し続けています。とはいえ、GLMが2009年に追加した100万番目の単語は「Web 2.0」だったそうで、この統計は非科学的だという論調も、一部の言語学者から出ているようです。
Web 2.0が英単語としてみなされるべきかについては、当時かなりの論争が巻き起こったそうです。ともあれ、言葉は廃語になる可能性もありますが、一度生まれ、記録されたそれらの存在が消えるわけではないので、文明が衰退しない限り、言葉は増加する傾向にあるといえそうです。
英語の語彙が豊富な理由
そもそも英語の語彙数はなぜこんなにも多いのでしょうか。
その理由の1つは、歴史的にさまざまな言語の言葉を取り入れてきたからです。例えば、cow (牛) やpig (豚) は昔から使われている単語なので本来語(ネイティブワード)と呼ばれていますが、beef (牛肉) やpork (豚肉) は実はフランス語に由来する借用語です。11世紀頃に「家畜を飼育する層」と「肉を食べる層」という社会の2層化によって、使われる言葉が多層化したからです。このような単語は二重語と呼ばれ、英語の語彙が豊富な一因になっています。
参考 英語の語彙に影響を与えた外国語
参考 英語の歴史を簡単に振り返る
また、2つ目の理由として、IT用語の多くが英語圏で誕生したことがあげられます。例えば、ネットの普及とともに生まれた、ウェブサイトやブラウザ、ファイル、ダウンロード、サーバー、モバイル、オンラインなどの用語は、英語圏で使われ始め、その後世界中に広まりました。また、アプリやハッシュタグのように、新しい単語は今なお造語され続け、英語の語彙数の増加の主因になっています。
参考 ソーシャルメディアやSNSが日本語や英語に与えた影響と問題点
日常的な英会話の語彙数は3000語
英語の語彙数は20~100万以上あるとされていますが、すべての単語が日常的に使われているわけではなく、またすべてを覚える必要もありません。一生聞かないような単語もたくさんあるはずです。
一般的に、英語の日常会話で使われる語彙数は約3000語だといわれています。イギリスの言語学者チャールズ・ケイ・オグデンが提唱したベーシック英語(Basic English)なら、850~1500語でも基本的な意思疎通は可能だとされています。
一方、英語圏の成人ネイティブが持つ語彙数は、20,000語~30,000語だといわれています。それぞれが持つ個人的な背景・経歴・興味・趣味・人生はもちろん異なるので、みんなが同じ単語や単語数を共有しているわけではありません。趣味や仕事の専門用語も含めれば、さらに膨大な数になるでしょう。
まとめ
今回は「英語にはいくつの単語が存在するのか」というテーマを中心に紹介しました。
「Q. 英単語にはいくつの単語が存在するのか?」という問いに対しては、「A. 英語の語彙数の定義があいまいなため正確な数は分からない」というのが基本的な解答です。とはいえ、以下のような解答例があります。
- 約17万語(Oxford English Dictionaryで現在使用中)
- 約29万語(Oxford English Dictionaryの見出し語数)
- 約60万語(Oxford English Dictionaryの総項目数)
- 約100万語(IT用語を含めた単語数、米GLMや言語学者の推計)
英単語の分析に関しては以下のような記事もまとめています。
参考 英単語で最も使われるアルファベット
参考 英単語で最も使われる頭文字
参考 英単語で最も使われる最後の文字
参考 英単語の平均的な文字数はいくつか
参考 最も使われる英単語TOP100
参考 最も使われる英語の名詞TOP25
参考 最も使われる英語の動詞TOP25
参考 最も使われる英語の形容詞TOP25